2024.08.04 家電量販店、ドミナント戦略加速 「体感型」が鍵 美容新業態店も登場
美容やヘアケアなどプロによる施術を受けられる新業態店も登場
家電量販店が、収益性と効率性を重視した店づくりを加速している。今年の家電市場は、全国的に早い時期から暑い日が続いたことなどでエアコン販売は順調だが、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電が苦戦気味だ。半面、物価高もあり製品単価は上がっている。夏商戦のピークが過ぎ、秋冬を見据えた売り場づくりが視野に入る中、量販店各社は付加価値を提案できる体感型店舗の開発にも力を入れている。
業界最大手ヤマダホールディングス(HD)は、家電から家具・インテリア、リフォーム、住宅、おもちゃまで生活に関わる全てがそろう新コンセプトの大型店「LIFE SELECT(ライフセレクト)」の出店を進める。既に32店舗を出店しており、今後も展開を強化していく計画だ。1万5000平方メートル規模の大型店の出店を目指しており、成長戦略の要と位置付ける。
エディオンはこの1年で9店を出店、6店を移転建て替えし、5店を閉鎖した。店舗効率を高めていくとともに、関東戦略の重要店舗となる約1万2000平方メートルの横浜西口本店(横浜市西区)を昨年12月にオープン。特定地域に集中して店舗を出店する「ドミナント戦略」を着実に進めている。リフォーム事業も強化しており、2024年3月には全国38カ所に営業所を展開する麻布をグループ化した。
ケーズホールディングス(HD)は、既存店の収益性改善を目指すとともに、老朽化した店舗を取り壊し、効率を高めた店舗に建て替える「スクラップ・アンド・ビルド(S&B)」を軸にしたドミナント戦略を推進している。27年3月期までの中期経営計画では、累計30店舗の出店、年間30店舗の改装を進めていく。
上新電機もS&Bによるドミナント戦略を加速。24年3月末で218店舗を展開しており、「ジョーシン」ブランドの強化を進める。約20年ぶりに群馬県に再出店するなど関東でも「面」での展開に力を入れている。
ビックカメラは都市部に構える店舗で集客力を生かした店づくりを強化している。店舗では商品の品ぞろえを拡充するとともに接客対応にも注力し、非家電商品の品ぞろえも充実させる。
ビックグループのコジマは「ビック×コジマ」店舗の効率運用に取り組む。単独店だけでなくショッピングモールなど他業態との集客シナジーを狙ったインショップ型の展開も図っている。
ノジマは店舗効率を考えた展開を進めており、昨年度は14店を出店し7店を閉店、221店の体制で家電店を運営している。大型店舗の出店ではなく接客力で商品販売につなげる戦略をとり、メーカーの販売員がいない自社従業員による「コンサルティングセールス」で差別化を図っている。
ヨドバシカメラはネットと実店舗との連携にいち早く取り組むとともに、体感型の店づくりにも注力。新たな取り組みでは6月に東京・池袋駅東口の西武池袋本店1階に、美容やヘアケアなどのさまざまな商品を専門スタッフのサービスを通じて比較体験できる店舗「Yodobloom(ヨドブルーム)池袋店」をオープンした。美容などの専門家の施術を受けながら店内にある商品全てを体験、購入できる上、SNSでの発信も自由にできる新しい体験型店舗になる。
量販店各社はこれまで、新規出店をベースに売り上げを拡大させてきたが、店舗効率を重視したドミナント戦略に切り替えている。今後は、リアル店舗ならではの魅力づくりが鍵を握るはずだ。