2024.08.30 【ソリューションプロバイダー特集】各社の事業戦略 NECソリューションイノベータ・石井力社長

疾病予測で未病を促進
人的資本経営などで優良認定

 公共、企業ともにDX需要が非常に高く、特にクラウド向けITサービスは継続的に伸びている。

 本業であるSI(システム構築)の高度化と、新しい価値を生み出すバリュープロバイダーとしての挑戦という二つの柱で事業を推進している。

 企業の基幹系システムを再構築するエンタープライズアプリケーションも実績が上がっている。顧客情報などさまざまなデータを分析して上流から業務コンサルティングを行い、基幹システムやデータ統合基盤の再構築を支援している。NECグループのアビームコンサルティングが有する約8000人のコンサル力と、導入後のデータ活用で当社の知見を生かし、サプライチェーンの再構築やグリーントランスフォーメーション(GX)を後押ししたい。

 例えば、中国から別のアジア圏に工場の再配置を進める大企業の生産マップの最適化を、グローバル戦略として上流から支援している。また、ベテランのシニア人材をプロジェクト管理や業務委託などで活躍してもらう仕組みも取り入れた。強みであるSIを生かして差別化を図っていきたい。

 バリュープロバイダー事業の源泉と位置付けるのが、病気を未然に防ぐ「未病」を促進するヘルスケア事業だ。子会社のフォーネスライフを通じて、血中のタンパク質を分析して将来起こりうる疾病を予測するサービス「フォーネスビジュアス」が軌道に乗ってきた。医療機関との連携も進み、年間100カ所単位で増えている。

 検査で将来の病気を予測し、保健師らがコンシェルジュとしてアプリを通じて健康指導を行い、行動変容につなげる取り組みだ。認知症や脳梗塞、肺がんなどのリスクを抑制することがデータとして実証され、医療費の削減効果があることが分かってきた。

 熊本県荒尾市や愛媛県今治市に導入されているほか、北海道や宮城県の複数自治体で検討が進んでいる。政令指定都市を中心に来年度の予算獲得に向け体制を整えている。

ヘルスケア事業を説明する石井社長

 企業や自治体から得られる健康データは、治験に膨大な費用を要する製薬会社のコスト抑制につながる。さまざまな形で収益化の道筋が見えてきた。

 事業展開の要となる社員のウェルビーイングに向けては昨年度、健康経営優良法人「ホワイト500」に認定された。健康、成長、働きがいの三つの柱で人的資本経営を進め、「人的資本経営品質2023」では、最も優良と認められたゴールド16社に選定された。介護や子育てといった社員の状況に合わせてワークライフバランスの自由度を広げていきたい。