2024.09.13 【育成のとびら】〈33〉上司との関係性に苦労した経験「あり」 5人に1人が「辞めたくなった」
どの職場においても、良い仕事をするためには良好な人間関係は欠かせない。特に上司と部下の関係性は重要だが、新入社員や若手社員から見ると上司は話しかけにくかったり、遠い存在だったりすることも少なくないだろう。
では、上司と直接やりとりする機会も多く、さまざまな社会経験を積んできた中堅社員は、上司との関係性をどのように捉えているのだろうか。
当社ALL DIFFERENTが中堅社員の悩みや壁(困難)の実態を探るためにラーニングイノベーション総合研究所とともに行ったアンケート調査から、実態を見ていきたい。
調査は2023年9月に、「ミドルキャリア」と位置付けた社会人歴5年目以上で管理職未満の社員600人に対し行った。
そこで「上司との人間関係に苦労したことはあるか」との質問に対し、年次別に「どちらともいえない」の回答を除いた割合を比較したところ、全年次において40%以上が「ある」と回答した(図1)。
「ある」の回答割合が特に高かったのは、社会人11年目以上で68.0%に上った。次いで10年目が62.5%、7年目が53.5%だった。
管理職への道が見え始める10年目以上が苦労している割合が高かった。
上司との人間関係に苦労した経験が「ある」と答えた層に対し、「その状況をどう捉えたか」を聞いたところ、「不満を抱いた」が27.8%で最も高く、「我慢した」(25.2%)、「辞めたくなった」(19.6%)と続いた(図2)。
相対的に後ろ向きの受け止めが多く、上司との関係に苦労した5人に1人で離職リスクが高まることが判明した。
不和解くカギ
業務経験を積んでいるミドルキャリアの場合、上司からの指示も簡略化されがちで、詳細な指示を仰ぐことができない状況がしばしば起きる。
ミドルキャリアの後期になり次期管理職として期待される場合は、指示や承認を受けるだけでなく、部門のけん引役、管理職と若手メンバーとのパイプ役などが求められるのが一般的だ。
しかし、自身の役割をプレーヤーのみと認識していると、次期管理職として求められる役割との間に齟齬(そご)が生まれてしまうことも多い。結果として、日ごろの業務の遂行でも上司と摩擦が生じることも増えるだろう。
上司と部下との不和の原因でまず思い浮かぶのが性格の不一致などだが、部下が新しい役割に対する知識・スキルの獲得やパラダイムシフト(劇的な変化)が追い付かないために、不協和音が生じてしまうケースもあるのではないだろうか。
ミドルキャリアは育成や指導の優先度が下がる「育成の空白地帯」になってしまうことは前回も触れた。これを解消するには、それぞれのステージの変化に応じて、クリティカルシンキング(批判的思考)や交渉力、チームビルディングの知識・スキルなどの習得支援をすることや新たな役割の伝達などに取り組むことが、今後の飛躍への土台にもなる。
ひいては職場や上司へのネガティブな感情を払拭するサポートにもなるだろう。(つづく)
〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉
【次回は9月第4週に掲載予定】