2024.11.15 【5G関連部品特集】5G通信用材料の技術開発が進展 低誘電率や低誘電正接など実現へ
5G/Beyond5G向け低誘電性フッ素樹脂基板
電子材料メーカー各社は、5G/Beyond5Gに照準を合わせた新製品開発、市場投入を加速させている。5G/Beyond5G用電子部品・デバイスで求められる低誘電率や低誘電正接、半導体実装に耐えられる耐熱性などを満たす材料開発を強化することで、5G関連市場(インフラ/端末)でのビジネス拡大を目指す。
5G通信は、超高速大容量、低遅延、多数同時接続などを特徴とし、世界各極で本格的な普及が進みつつある。5Gの周波数は、ハイバンドでは30ギガヘルツ近傍以上のミリ波帯域が使用される。このため5Gのミリ波領域に照準を合わせ、高周波や高速大容量伝送に対応するための電子部品・デバイス開発へのニーズが増加。5Gは同時多接続や低遅延といった特徴を持つためIoTの普及促進への寄与も期待されている。
こうしたニーズに対応するため、化学材料メーカー各社は、5Gの基地局や端末などに照準を合わせた新製品開発や既存素材の新グレード品開発などに全力を挙げている。各社は、5G通信で使用されるデバイスで求められる低誘電率や低誘電正接、優れた耐熱性などを兼ね備えた素材開発を進めることで、5G関連材料ビジネスの積極的な拡大を目指している。
5Gアプリケーション向け材料開発では、低誘電率や低誘電正接を実現し、機械物性や耐熱性にも優れる高周波プリント基板用絶縁材料や5Gアンテナ基板材料、高速伝送用電子部品向け材料などの開発が進展している。各社は、精緻な分子設計などを行うことで、優れた低伝送損失を実現できる素材開発を追求し、大容量通信の安定化への貢献を目指している。加工のしやすさや接着性、電子部品・モジュールの小型化への寄与なども追求される。
既存の4Gインフラと比較すると、5Gではより高い周波数で超高速通信を行うため、小型基地局(スモールセル)を数多く設置する形でのエリアカバーが必要とされる。このため、5Gの進展によって世界の通信基地局市場は大きく増加することが見込まれている。5G基地局の整備は、当初の計画よりもやや遅れているが、今後、本格的なスモールセル敷設が進めば、5G用低誘電材料などの需要も大きく増加していく見込み。
5Gや生成AI(人工知能)の普及で爆発的に増大するデータ通信量を支える超高密度・細径光ケーブルの開発も進んでいる。独自構造により1本のケーブルに数千本の光ファイバーを収容可能とし、使用する材料の削減や敷設に要するエネルギーの削減による環境負荷低減が提案されている。
ミリ波対応スマートフォンの市場は、現状では市販しているメーカーが一部に限られ、日本ではあまり市場が広がっていないが、今後はミリ波対応基地局の整備とともに、徐々にミリ波の活用が進んでいくことが期待されている。
さらに、2030年頃の実用化が予想されている6G(第6世代移動通信システム)向けの次世代低誘電マテリアルの研究開発も始まっている。