2024.12.02 欧州の半導体・電子部品業界最大の見本市「エレクトロニカ」開催! 出展社・来場者とも前回を大きく超える盛況ぶり

開幕直前のエレクトロニカ2024

会場となったメッセミュンヘン。今回は奥に見える全18ホールを使用した会場となったメッセミュンヘン。今回は奥に見える全18ホールを使用した

商談ブースは大賑わい商談ブースは大賑わい

スマートグラスのデモスマートグラスのデモ

AIを搭載したロボットのデモもAIを搭載したロボットのデモも

 最新のファッションを発表する場として、「パリコレクション」のようなイベントが開催されるように、半導体や電子部品の業界でも最新の技術や製品を発表する場として「展示会」や「見本市」が国内外で開催されている。電子部品・半導体、システム分野の見本市で世界最大の規模を誇るのがドイツのミュンヘンで開催される「エレクトロニカ」。今年のエレクトロニカは11月12日から15日まで開催され、全18のホール(19万2,000平方メートル)を使い、59の国と地域から3480社が参加、8万人のバイヤーを集めた。前回(2022年開催)は全14ホール(15万平方メートル)、出展企業は51の国と地域から2140社、来場者数6万9783人だったため、出展企業・来場者ともに大幅に伸長。半導体・電子部品への関心の高さがうかがえる。

 この見本市を主催しているのは「メッセ・ミュンヘン」(ミュンヘン見本市会社)。メッセはドイツ語で見本市の意。ドイツでは全国主要都市に大規模な見本市会社と展示場があり、見本市・展示会の誘致にしのぎを削り開催を競っている。1964年開催以降、偶数年に開催されてきたエレクトロニカは今年で60周年を迎えた。元来、日本は世界でも電子部品が得意な産業だけに、複数のコンデンサーや抵抗器メーカーが70年前後には既にエレクトロニカに参加している。エレクトロニカには「マイクロ」(100万分の1)や「ナノ」(10億分の1)といった超微細加工技術を使った半導体から高性能システム、測定器、センサー技術など多方面のハイテクを駆使した製品が展示されている。さらに自動車向けやディスプレー機器向けなどの多彩な半導体製品が並ぶ。従ってこうした部品や半導体、計測器を自社の製品製造や検査に使う人ばかりでなく、技術者、設計者、研究者、保守担当など多くの職種に従事する人で会場内はにぎわった。

見本市と展示会の違いとは?

 そもそも、見本市と展示会はどう違うのか? 日本貿易振興機構(JETRO)の定義によると以下のように区別されている。

 「見本市」とは文字通り見本をもって売買の商談を行う“市(いち)”であり、他方、「展示会」は、物品などを 並べて“見せる”機能を指した表現です。従って、来場者を原則としてビジネス関係者に限定して(B to B)、商品の売買交渉を目的とする見本市と、企業イメージの向上とか新製品の紹介など、当面の商取引よりもむしろ将来へ向けた企業価値の向上を目的とする展示会とは、本来的には、区別して考える必要があるところ。

 ちなみに、英語では見本市は Trade Show ないし Trade Fair のように Trade(売買)を冠して呼ばれることが一般的であり、展示会は単にShow、Fair、あるいはExhibitionやExposition(大規模なもの)と呼称されるのが普通。また、ドイツでは催しの性格付けがより一層明確に意識されており、見本市はMesse、展示会は Ausstellungと催しの性格によって区別して認識されている。

https://www.jetro.go.jp/ext_images/j-messe/column/pdf/fair_exhibition.pdf

 この定義の通り、エレクトロニカは半導体・電子部品の商談の場という色合いが強い。近年では、最新の半導体・電子部品を用いることで、こんなことができるという事例を紹介するためにロボットを動かしたり、自動車のスマートコックピットを展示したりするブースが多くなり、展示会的な要素も強まってはいるものの、今でもブースには商談のためのテーブルと椅子だけであったり、重要顧客のための小部屋だけというブースも珍しくない。当然、会期中は分刻みのミーティングが行われ、ブース内のテーブルでは出展企業の営業担当者・技術者とバイヤーの活気ある商談を至るところで目にする。エレクトロニカでは、普段会えない企業のトップや幹部クラスにも面会することができ、商談だけでなく情報交換や交友を深める場としても重要視されている。

商談ブースは大にぎわい

今年の目玉はAI

 今年のエレクトロニカの話題は何か。来場者の多くが「AI」(人工知能)と答えた。AIを使うことで企業は競争力を増し、企業は運営費を削減、気候問題に貢献できる、などの言葉が多くの来場者から出てきた。さらに機械学習を通してシステム自体を改善するほか、より効率的なエネルギー供給が可能になるという。エネルギー分野で新しいビジネスモデルとサービスを可能にするのがAIベースのアプリケーションだ。

 この10年、多くの自動車分野の来場者が注目してきたのがエレクトロニカだ。今年の同展は“全電化社会”とでもいうべきか、“All Electric Society”をスローガンに打ち出した。電動化とデジタル化が新しいモビリティーの発展をけん引しているといわんばかりだ。

 自動車関連部品や半導体メーカーのブースは人だかり。なにしろドイツは欧州の自動車産業をけん引している。「それだけに自動車メーカーの注文は厳しく、品質管理も万全の体制で臨んでいる」。ある出展企業のブース担当者の言葉だ。

 エレクトロニカと並行して半導体製造装置関連・材料関係の「セミコン・ヨーロッパ」が会期中に同時開催。SEMIヨーロッパの責任者ライト・アルティミム氏は「エレクトロニカとSEMIのような装置業界が共催することで、相乗効果が出てくる」と語っていた。