2024.12.24 九州半導体工場建設プロジェクトの裏側

今年完成した熊本のJASM外観(JASMのHPより)

九州でのプロジェクトについて語る平松副社長九州でのプロジェクトについて語る平松副社長

九州でのプロジェクトにおける各社との連携図九州でのプロジェクトにおける各社との連携図

 2024年の半導体業界における一大ニュースは、TSMCの熊本第一工場完成のニュースだろう。今年2月に開所式が行われ、量産開始に向けた準備が進められている。同社は隣接する用地で第2工場の建設も開始しており、27年の稼働開始予定。TSMCの熊本進出を契機に半導体関連企業による投資は、熊本や九州各地で行われており、引き続き熊本および九州から目が離せない。現在も日本国内では複数の半導体工場建設プロジェクトが進むが、そのプロジェクトはどのように進められているのか?今回は、半導体工場建設の裏側を紹介する。

日本と台湾ではプロジェクトの進め方が違う

 半導体工場の建設には施主である半導体企業、ゼネコン、下請け業者など多くの企業が関わる。熊本の事例のように施主が台湾企業の場合は、台湾工事業者の海外派遣も加わり、日台企業の協業で進められる。日本と台湾ではプロジェクトの進め方も異なる。緻密な工程やスケジュールを組み、計画通りにプロジェクトを進める日本に対し、台湾では臨機応変に対応することが求められる。今回のような日台連携によるプロジェクトは、双方の意図をくみ柔軟に進める「コンダクター(指揮者)」のような役割が必要だ。今回、その役割を担ったのが台湾のデルタ電子だ。

台湾企業でありながら日本のビジネスを理解

 同社はスイッチング電源をはじめとするパワーエレクトロニクス部品メーカーとして1971年に創業。現在では事業を拡大し、産業およびビルオートメーション機器、情報通信機器など幅広い機器の製造・販売も行っている。日本においては1991年に日本法人を立ち上げ、着実に事業を拡大。グローバルで展開するソリューション提供を日本法人でも担い始め、ソリューションベンダーへの転換を図っている。九州でのプロジェクトでは、生産ラインの電気および配管工事、UPS製品供給および設置工事、監視システム・セキュリティー機器の供給・設置工事などを担当しつつ、企業との連携など全体の調整役も担った。長年、日本でビジネスを行ってきた知見を生かし、日本式のプロジェクト管理に沿いつつ、台湾企業として熟知する台湾式のプロジェクトの進め方にも対応。日本と台湾の違いを理解し、柔軟に対応できる企業は少なく、同社は適任であったと言える。

 今月、東京で開催されたSEMICON JAPANの会場で行われたセミナーにて、同社は九州のプロジェクトについて紹介した。講演した日本法人の平松重義副社長は「日本企業のプロジェクト管理は計画8割・調整2割。一方、台湾企業は計画2割・調整8割と真逆。当社は台湾企業でありながら日本で長らく事業を展開し、日台双方の良さを理解している。スピードと柔軟性、高品質のサービス提供を通じ、工場完成までサポートすることができた」と話す。

AI時代に向けてデータセンターも

 こうしたプロジェクトへの参画を通じて、ソリューションベンダーへの転換を進めている同社。半導体工場とともにAI時代の社会インフラでもあるデータセンター(DC)への取り組みも強化している。同社では通常のDC構築のほか、コンテナ型DCも提供している。

 提供するのは、一般的なトラックでけん引可能な20フィートのコンテナに主要な機器を格納したオールインワンDC。AIの普及拡大を支える社会インフラでもあるDCだが、通常であれば構築期間として最低18カ月は必要となる。コンテナ型データセンターであれば、最短数週間から数カ月での設置が可能で、データセンターの早期構築を実現する。拡張性に優れ、設置しやすいこともあり、世界中で200件以上の設置実績がある。

ソリューションベンダーへの転換目指す

 日本法人の華健豪代表取締役社長は「ビジネスモデルが年々変化し、当社の活動も従来の製品提案からソリューション提案に変わってきている。AIの登場により、その動きはますます加速している。データセンターからエネルギー関連、オートメーションまで、幅広いソリューションを1社で提供できる企業は少ない。当社はその強みを生かし、ビジネス拡大につなげている」と話す。