2024.12.25 台湾の半導体設計企業CMSC トップインタビュー
日台連携の重要性について語る陳董事長
日本国内における最先端半導体の製造を実現する上で、重要な役割を担う台湾。半導体業界のみならず日台連携は古くから行われ、双方の強みを生かし強固なサプライチェーンを構築してきた。最先端半導体においては、前工程・後工程ともに複雑化しており、各工程に関わる技術連携も重要となる。さまざまな工程が複雑に絡み合う半導体製造を円滑に進めていくために、半導体の製造工程よりも上流の工程に当たる設計・開発は非常に重要。しかし、半導体の設計・開発を担うデザインハウスは台湾および日本に存在するものの、企業数も規模もまだまだ小さい。今後、設計・開発分野を強化していくためにも日台連携を通じて設計・開発分野が成長していくことが重要となる。
台湾の益芯科技(CMSC)は2001年にEDA大手の米ケイデンス・デザイン・システムズ(以下、ケイデンス)の資本により、台湾・新竹でIC設計サービス企業として設立された。その後、サービス拡大を図るためさまざまな企業から資金調達を行い、ケイデンスが保有する全株式も譲渡され、03年にASIC設計・開発会社として独立した。20年には日本進出を果たし、ビジネスを展開している。
陳仲羲董事長は「日本と台湾はお互いに補完関係にあり、半導体産業の発展を実現してきた。日本は製造装置や材料関連で優れた技術を持ち、台湾は製造技術や設計・開発に強みを持つ。設計・開発の面では米国企業の力が強く、日台企業が個別に対抗することはできない。日台の連携を通じて設計・開発の分野でも強みを発揮し、さらなる成長につなげることができる」と話す。
同社は今年、福岡市内に子会社を設立し、九州で高まる半導体設計需要に対応する。九州の人材を中心に雇用も増やし、SoC(システム・オン・チップ)などの設計を手掛ける。九州大学の安浦寛人名誉教授が経営陣として加わるとともに、九州大学には1000万円を寄付し、学生をインターンシップに招くなど人材育成にも力を入れる。
陳董事長は「九州には半導体関連技術を持つ企業が集積している。韓国や台湾、中国沿岸部と地理的にも隣接し、地の利もある。経営に参画してもらう安浦名誉教授は、半導体設計に関する技術の集積を図り、九州から韓国、台湾、シンガポール、インドに至るシリコンシーベルトを形成するという構想を持っている。当社も人材育成などに関わり、日台連携を加速させる」と話す。
裾野が広い半導体産業だが、設計・開発を担うICデザインハウスは日本にそれほど多くないのが現状。陳董事長は「日本でも起業を目指す若い人の力が必要」とし、スタートアップ企業の設立を支援する。「今、最も勢いのある半導体企業であるエヌビディアも最初はスタートアップ企業だった。ICデザイン業界における回路設計の達人のような人が現れることを期待している。そのためにも当社は人材育成など支援し、日台の懸け橋になりたい」と話す。