2024.12.26 見えてきた!ラピダスが目指すビジネスモデル
ビジネスモデルについて説明する藤野専務
最先端ロジック半導体の国内製造を目指すラピダス。今月18日には、北海道千歳市で建設中の生産拠点「IIM-1」にて、EUV露光装置の設置作業が開始されるなど、最先端半導体の製造に向けて着実に準備を進めている。同社が目指すのは、世界最高水準の微細化プロセスによる半導体製造ということもあり、報道されるニュースは製造に関するものが多い。しかし、同社の考えるビジネスモデルは半導体製造に特化したものではない。ラピダスが目指すビジネスモデルについて考察する。
設計支援から前工程・後工程まで一貫して行う
半導体製造工程はウエハーというシリコンなどを原材料とする円板にさまざまな処理を施し、回路を形成する「前工程」とウエハーを個別のチップに切り出し、電極形成や封止を施す「後工程」に分けられる。現在、半導体業界は水平分業化が進んでおり、自社で製造は行わず半導体の開発・設計を行うファブレスメーカーや前工程を受託するファウンドリー、後工程を担い実装・封止・検査・出荷を行うOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)などの業態に分かれている。
ラピダスはファウンドリーに分類され最先端半導体の製造を担うわけだが、製造に特化した従来のファウンドリーとは異なり、新たなビジネスモデルを提供していく。具体的には設計・開発の支援から前工程・後工程まで一貫して行う「RUMS(Rapid and Unified Manufacturing Service)」の構築を目指している。このRUMSにより、顧客の要望に沿った2nm GAA(ゲート・オール・アラウンド)プロセスを採用した専用チップやチップレットを世界最速のサイクルタイムで出荷することを目標とする。
AIとビッグデータを活用し世界最速のサイクルタイム目指す
シリコン技術本部で副本部長を務める藤野繁大専務執行役員は「ラピダスの社名は英語で“迅速”を意味する“Rapid”に由来する。その名の通り、世界最短のトータル・サイクルタイムで最先端半導体製品を出荷することを目指す。そのためにも、製造の上流工程に当たる設計への支援を通じ、全体の最適化をスピーディーに行う」と話す。RUMSを実現するため、設計支援においてはAI(人工知能)を活用する。製造工程で得られるさまざまなデータをAIで解析し、それを顧客と共有することでスピーディーな設計につなげていく。同社ではMFD(Manufacturing For Design: 設計のための製造)という概念を取り入れ、設計と製造を同時に最適化し、アジャイルな設計を可能にする。
前工程では300mmウエハーを1枚ごとに処理する枚葉式プロセスを採用する方針。これにより、設計支援のための大量のデータ収集が可能となる。このビッグデータとAIを活用し設計にフィードバックすることで短期間での歩留まり向上が期待できる。後工程では半導体を構成する要素を個別設計し、最終的に1チップに組み合わせるチップレット技術を独自開発する。この一貫したRUMSをビジネスモデルとし、迅速で高品質な最先端半導体製造を実現する。
従来のファブレスとは異なるビジネスモデルで、今までにない最先端半導体の製造を目指すラピダス。2025年4月には、IIM-1でのパイロットライン稼働開始を予定する。日本国内での最先端ロジックデバイスの製造実現に向け、着実に歩みを進める。