2025.01.10 【放送総合特集】放送機器各社 25年の戦略 ミハル通信 岩田春樹社長
岩田 社長
IPエンジニア技術力強化など
売上高100億円超目指す
昨年は、当社にとって大きな飛躍の年となった。特に、極超低遅延伝送技術のエンターテインメント分野での可能性や、AI(人工知能)開発などのソフトウエア開発の強化に注力してきた。売上高や営業利益はほぼ予定通りの見通しだ。
中期的にはIPエンジニアの技術力強化とIP技術の展開を軸に、より地域に寄り添った提案を推進する。さらに、AI開発などソフトウエア開発を強化し、売上高100億円以上を目指す。
2023年に古河C&B(FCB)の全事業を譲受した。ハードとソフトの両面で技術融合を実現しながら、営業体制も見直しており、4月から整えた組織を立ち上げるよう準備を始めている。これまで別々に営業していたところを一本で提案できるなど、お客さまに今までと違う方向からアプローチできる。例えば、ミニサテの維持更新の際に、バックアップIPで簡易的に保守・更新ができるといった具体的な提案ができることも大きい。
一方で、地方における少子高齢化や人口減少による労働力不足が課題。CATV業界でも、放送無線やアナログ技術分野などのエンジニア不足で、システムの維持や保守が難しくなっている。
こうした背景下、保守の体制整備にも力を入れてきた。当社のヘッドエンド装置をリモートで監視・運用支援する管理プラットフォーム「M-3(エム・トリプル)」保守サービスを提供しており、約60局で採用されている。昨年は新開発のAI技術を使ったトライアルを紹介し、好評だった。今年はCATV事業者にも試してみる予定だ。
ケーブルテレビ加入者の減少対策として、FTTH(光回線)を活用した高速通信や、当社独自の映像伝送システムを活用したお祭りやイベント中継をコミチャンに追加することなども提案している。より付加価値の高いサービスを提供することで、ケーブルテレビが地域の安心・安全に欠かせないインフラとして存続できるよう、これからも全力でサポートしていく。
放送向けと音楽・エンターテインメント業界向けに、世界最高水準の極超低遅延映像・音声伝送システム「ELLシステム」を提案している。さまざまな分野で期待されており、今後もこの技術を生かした新しいビジネスの提案を進める。
昨年はELLシステムと連携し、さまざまなデモを行った。6月のCOMNEXTでは、トヨタ自動車未来創生センターが開発した生活支援ロボットでの遠隔操縦をデモ。11月のInter BEEでは、開発中の360度全方位集音マイクを使用し、最大22・2チャンネルの音響を極超低遅延で伝送することで、360度イマーシブ映像・音声伝送を体感できるデモを行い、高い注目を集めた。演者の位置関係や音の聴こえてくる方向もそのまま伝送できる。伝送システムから音響設備構築までトータルソリューションを提供する。
当社は、鎌倉本社に研究開発、製造、営業、品質保証、保守などの全部門が集結している。自社開発、自社製造の強みを生かすことで、迅速にユーザーの要望に対応できる。今年も当社の強みであるワンストップソリューションを生かし、お客さまの声を大切にしながら、新製品の開発に取り組み、新しい市場にも展開していく。