2025.01.21 【半導体/エレクトロニクス商社特集】〝ゴールデンタイム〟迎えるインド市場

エレクトロニクス商社各社が注目

 インド市場は「ゴールデンタイムを迎えている」。同国で地歩を固めつつある日本のエレクトロニクス商社のトップは1月の決算説明会でそう語った。日本から長く進出の試みが続き、商習慣の違いなどがリスクとなっていた市場だが、車載分野などで機会も多い。

 米トランプ政権発足後、米中問題による規制はますます厳格化する。エレクトロニクス商社の多くがそう認識し、海外展開においては東南アジアに続きインドへの注目が一層高まりつつある。

 マクニカホールディングスは、海外ネットワーク事業でシンガポール、マレーシア、タイなど東南アジア諸国が成長。市場成熟度に合わせたネットワークセキュリティー、ID管理、暗号鍵管理といった製品が貢献している。しかし半導体事業での戦略は異なる。米中分断リスクを踏まえ、中国以外のアジアの強化を図る上で今後の大きな成長が見込めるインドを重要市場とし、注力していきたい考えだ。

 加賀電子は、成長ドライバーと位置付ける電子機器製造受託(EMC)事業で各地に自社工場を持ち、2027年度までの中期経営計画で日本、アジア、米州での成長に期待する。アジアではインド国内と輸出向けの需要増を見据えた自社工場投資を主要施策に掲げている。

 同社は半導体を販売する「カガ・デバイス・インディア」を11年にベンガルール市で、EMSを手掛ける「カガ・エレクトロニクス・インディア」を18年にマーネーサル市で設立している。

 トーメンデバイスは24年10月~25年3月の重点施策として、アジア市場ではインド市場の開拓を掲げ、地元IT企業へのアプローチを強める。

 たけびしはシンガポールで電子部品・機器販売を行う子会社リ・チャンプがニューデリーなどの拠点から半導体需要を捉える。スマートメーターや二輪電気自動車(EV)向けを広げるほか、新たな基板事業も展開。工場の製造ラインとITシステムを、制御機器用通信規格OPCで接続するソフトも独自製品として拡販する。

 サンワテクノスは「サンワテクノス インド」を23年にベンガルール市で設立。24年には同社のグルグラム事務所をグルグラム市に開設した。中国リスクの影響を最小限に抑えられるよう対処し、生産移管を進める顧客への支援体制を整え、現地代理店としての営業基盤を確立する狙い。ベンガルールで今月開催される「インド工作機械展」に出展し、労働力不足などの課題解決を提案するロボットソリューションなどを紹介する。

 新たにインド法人を設立する動きも続く。立花エレテックは1月にグルガオン市で「タチバナセールス(インド)」の業務を開始。戦略的に強化している半導体、電子デバイス製品、工場自動化(FA)システム製品の需要拡大が期待できる重要市場で、シンガポール、香港、台湾、中国、タイ、マレーシアと日本国内のネットワークを生かし地域のニーズを捉えて拡販を図る。

 カナデンは今月、「カナデン・ソリューションズ(インディア)」をベンガルール市で設立。25年度を最終とする中計で、成長が期待できる地域への進出を推進してきた成果の一つだ。国内外で培ってきたモノのインターネット(IoT)製品、自動化ソリューションを提供し、企業の生産性向上に寄与する。

 佐鳥電機は23年に子会社化したインドのエレクトロニクス商社SMエレクトロニク・テクノロジーズ(SMET)を通じ、事業を拡大している。

 24年6~11月の連結決算では、産業機器向けなどの減収をSMETの好調による車載向けなどの増収が補う形となった。16日に開いた決算説明会では、佐鳥浩之代表取締役社長執行役員が、24年の同市場について「EV化の波が押し寄せた」と振り返った。

 波に乗るべく二輪、三輪車向けEVチャージャーソリューションを350W~3300Wのフルレンジで展開。窒化ガリウム(GaN)デバイス搭載の次世代製品も開発している。ティア1車載部品メーカーのアナンドグループ子会社と取引を開始した。

 インド国有鉄道を対象に列車向けインフォテインメント、セキュリティーソリューションも開発し、鉄道関連企業を通じ事業を始めた。市場のリスクについては「政治や税制について今のところ大きなものはないと捉えている」としたが、注意すべき点として「日本とは全く違う商習慣」を挙げた。