2025.01.31 九州の半導体産業振興 さが半導体フォーラムが展示会で訴求
さが半導体フォーラムのブース
1月22~23日の3日間、エレクトロニクス機器の製造技術の総合展示会「ネプコンジャパン2025」が東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。同展示会は、最先端の実装機や検査装置、電子部品、半導体、材料など、幅広い分野の企業・団体が出展している。ネプコンジャパンはイベントの総称であり、各分野に特化した7つの専門展で構成されている。半導体に関わる展示会も複数あり、中でもパワーデバイス&モジュールEXPOには主要なパワー半導体および材料メーカーなどが数多く出展した。展示会にはメーカーだけでなく、地方における半導体産業の振興を目指す地方自治体も出展していた。シリコンアイランドとして注目を集める九州からは、佐賀県の産学官の協議体「さが半導体フォーラム」が出展。同フォーラムに参画する企業10社が共同で参加し、半導体サプライチェーンを支える商材を訴求した。
さが半導体フォーラムは、佐賀県内における半導体産業の基盤強化を目的とした産学官の協議体。半導体人材の育成・確保やサプライチェーン強化、関連産業の認知度向上に取り組んでいる。今回出展した10社は、半導体製造装置やデバイス製造に関わる部材、梱包材、めっき関連など、半導体を支える企業が中心。九州には半導体製造拠点が集積しており、デバイス製造に必要な部材や製造装置のメンテナンスで使用する部材などが必要となるため、九州内でのサプライチェーン構築が進んでいる。今回出展した10社も強靭(きょうじん)なサプライチェーン構築への貢献を目指す。
田中電子工業は田中貴金属グループ企業として、ボンディングワイヤを供給している。佐賀県吉野ヶ里町に本社を置き、グローバルに製品供給を行う。ボンディングワイヤは半導体チップ上の電極とパッケージ基板のリードフレームをつなぐ導電線。銅やアルミ、金など、各種ボンディングワイヤをそろえる強みを生かし、半導体のデバイス製造を支えている。近年、パワーデバイス向けでは大電流や高温に対応するため、従来のアルミから銅ワイヤへの移行が進む。同社も太線の銅ワイヤのサンプル出荷などを通じて、パワーデバイスメーカーへの提案に取り組む。ブース内でも銅ワイヤのボンディング事例を模型で紹介した。
ニシハラ理工は、半導体・電子部品へのめっき技術を提供する企業。パワー半導体向けのリードフレームへのめっき処理に注力しており、ブースでは「銅の化学エッチング」を訴求した。リードフレームの表面を粗化(凹凸を付ける)ことで、パッケージ基板とリードフレームの密着性を大幅に向上することができる。営業部の西本洋道主任は「パワー半導体は高温環境下で使用されるため、発熱を抑えるためにもエネルギー効率の向上は重要。銅の化学エッチングは、パワー半導体パッケージ技術の信頼性向上に寄与する」と話す。
日本タングステンは、粉末冶金技術を活用し、高い耐久性と優れた機械的性能を持つ製品を提供している。今回は開発中の半導体製造装置向け「プラズマ耐性部材」を展示。材質はセラミックで成形しており、従来のシリコン製の部材に比べて長寿命を実現する。そのほか、シーズ開拓の目的で導電性セラミックス部材を展示したほか、3Dプリンタメーカーと共同開発している3D造形セラミックスなども紹介した。
印刷物に必要なマスク製品を取り扱うミタニマイクロニクス九州は、新たな事業としてスクリーン印刷技術を用いた回路基板製造の提案に力を入れている。ブースでは、同社の技術を用いて回路形成した窒化アルミヒーターを展示。半導体製造工程における加熱工程での利活用を見込み訴求した。
ニシキは、半導体や電子部品を収納する梱包(こんぽう)材「エンボスキャリアテープ」を製造、販売している。0201サイズの極小チップから3ミリメートル角のベアチップまで対応するキャリアテープを展示した。中島義弘上席執行役員は「生産拠点は佐賀のほか、鹿児島、岩手の3拠点体制。岩手ではコネクタ用のキャリアテープを生産している。半導体関連は九州への投資も盛ん。半導体向けでの需要拡大に期待する」と話す。