2025.04.27 ニコ超でマシンレースが白熱 参戦3チームのドラマに迫る
「はや」の文字が刻まれたスズキの車体
動力付き自動車模型が疾走――。千葉市美浜区の幕張メッセで26日に開幕し、きょう最終日を迎えたインターネット発の文化祭「ニコニコ超会議2025」を舞台に、技術者たちの自慢の技が注ぎ込まれたマシンが白熱したレースを繰り広げた。参戦したチームに迫った。
「超ニコ四駆」と銘打った今回のレースは2023年から続く人気企画で、ベアリング(軸受け)国内最大手の日本精工(NSK)が3年連続で協賛。事前の予選イベントなどを通じて多くの人が参加できる企画に仕上げたほか、26日には初めて企業対抗戦「超ルール無用JCJCアスレチック」を開いた。
目玉の企業対抗戦に出場したのが、NSKと自動車大手のスズキ、高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市)だ。
有志で結成された3チームがエンジニアの創意工夫が施された「魔改造マシン」で参戦。30秒以内に障害物が設けられた特別コースを何周できるかに挑み、記録を競い合った。その結果、1回戦で4周、2回戦で8周したKEKが優秀の栄冠を手にした。
KEKは約1カ月弱で車体の完成にこぎつけた。チームを先導した准技師の荒木隼人さんはマシンの開発に挑んだ当時を振り返り、「どれだけマシンを速くしても不安だった」と心境を明かす。
優勝のカギを握った技術が、車体の要となる電子制御技術だ。荒木さんは「(マシンの開発は)電子制御を取り入れる前提で進めた。ミニ四駆をやったことがないメンバーが集まり、それぞれが得意とする技を集結した」と述べた。
電子制御を追求する役割を担ったのが、加速器研究施設技術員の小笠原舜斗さん。当初は多くの機能を詰め込もうと考えたが、部品を小型化するために機能を絞り込んだ。その道のりは決して平たんではなかったが、チームの結束力で突破。小笠原さんは「普段やらないはんだ付けやプリント基板作りに挑んだ。さまざまな人の協力を得てマシンを完成することができた」と感謝を口にする。
2位の座についたのが、1回戦、2回戦ともに6周の戦績を残したスズキ。「車は積み重ねの技術」と強調する二輪事業本部二輪営業・商品部商品企画課係長の江口卓也さんは「もう少しチャレンジしないと勝てないことが分かった」と、悔しさをにじませた。
それでも江口さんは「十分実力を出せた」と満足気だ。優勝には手が届かなかったものの、車に興味を抱くきっかけとなったミニ四駆を完走させた実績に、大きな達成感を感じていた。
マシンの制作には「ものづくり部」などが参加。技術開発に焦点を当てたNHKのエンターテインメント番組「魔改造の夜」に「Sズキ」(エスズキ)として出演したスズキのチームも携わった。
魔改造の夜プロジェクトSズキ総合リーダーを務めたのが、スズキでデジタル化推進部ITシステム・人財開発センター主管を務める小串俊明さんだ。レースに参戦する狙いについて小串さんは「モノづくりの基礎体力を付けるための取り組み。ものづくり部の部員も『魔改造の夜』への出演をきっかけに増えた。モノづくりが好きで集まった人たちだ」と説明する。
NSKの健闘も目立った。2回戦では、異例の2台を投入し、会場を沸かせた。満足のいく記録を残せなかったものの、チームを率いた産業機械事業本部E&E本部E&Eマーケティング部担当課長の郡嶋聡太郎さんは「やりきった結果だ」と胸を張る。
NSKは、部品を組み合わせて一からマシンに仕上げる取り組みで知恵を絞った。そこには、制作短期間で開発や検証を繰り返す「アジャイル(機敏な)開発」という手法を採用した。ベアリングメーカーとしての事業にも生きる「良い経験」(郡嶋さん)が得られたという。
まさに「三者三様」の熱いドラマが詰まったマシンのバトルは、来場者の記憶に残る名勝負となった。