2025.05.02 日立が新中計「Inspire 2027」発表 「ルマーダ」を次のステージへ、27年度で売り上げ比率50%目指す
日立製作所は2027年度(28年3月期)を最終とする中期経営計画「Inspire 2027」を発表した。調整後EBITA(調整後営業利益+買収に伴う無形資産などの償却費)率13~15%、ROIC(投下資本利益率)12~13%を目指す。德永俊昭社長兼CEOは「持続的に成長して日立を次のステージに引き上げる」と力を込めた。
3月末で「2024中期経営計画」が終了した。3年間の売り上げ年平均成長率(CAGR)は14%(中計目標5~7%)、ROIC10.9%(同10%)、コアフリーキャッシュフロー1.8兆円(同1.2兆円)と目標を上回り、調整後EBITA率は目標の12%には届かなかったものの11.7%とおおむね計画線で着地した。
德永社長は「キャッシュフローとROIC重視の経営が定着と、グローバルでの自律分散経営が定着した」と総括し、新中計でさらなる成長軌道に乗せていく考えを示した。
真の〝ワン日立〟掲げる
新中計では、グループや地域が一体となる、真の〝ワン日立〟を掲げ、持続的成長に取り組む。エネルギーなどの「エナジー」、鉄道などの「モビリティ」、産業向けの「コネクティブインダストリーズ」、DX関連の「デジタルシステム&サービス」の4事業を軸に、米、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アジア太平洋州、インド、日本、中国のグローバル6極で展開する計画だ。
中でも16年に展開を始めた主力デジタル事業「ルマーダ」は、次のステージに引き上げていく。前中計時代は「ルマーダ2.0」と名付け、デジタルの中核となる米グローバルロジックを買収し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速してきた。新中計では日立グループが培ってきた各事業領域での知見(ドメインナレッジ)を、AI(人工知能)で進化させる「ルマーダ3.0」として展開する。
ルマーダ2.0では、システムを運用も含めて支援する「マネージドサービス」、デジタル技術を実装する「デジタルエンジニアリング」、現場からの各種データを集める「コネクテッドプロダクト」、システムを構築する「システムインテグレーション」の四つを循環させてきた。
新たな価値創出目指す
3.0ではマネージドとデジタルを「デジタルサービス」、コネクテッドとSIを「デジタライズドアセット」としてくくり、双方を循環させながらドメインナレッジとAIを掛け合わせて新たな価値創出を目指す。これによりルマーダ売り上げを24年度の3兆円から25年度は3.9兆円に、調整後EBITA率を15%から16%に伸ばす。ルマーダ売り上げ比率も31%から38%に引き上げる。
自社顧客へのシステム展開だけでなく、他社システムを導入している企業に向けても展開を図る。27年度の目標としてルマーダ売り上げ比率50%、調整後EBITA率18%を掲げ、特化型LLM(大規模言語モデル)の開発や事業ポートフォリオ改革を進めて収益性を高める。德永社長はルマーダの長期目標も明らかにし、将来的にルマーダ売り上げ収益比率80%、調整後EBITA率20%を目指していく。
4領域で事業創生に着手
成長事業の創出に向け、社長直轄組織の戦略SIB(ソーシャル・イノベーション・ビジネス)ビジネスユニットを新設した。事業開発に5000億円投じる計画で、データセンター、電動化領域のイーモビリティー、スマートシティー、ヘルスケアの4領域で事業創生に着手する。研究開発も強化する方針で、治療、移動、量子、宇宙の領域に3年累計で1.3兆円の研究開発投資を行う。
人的資本への積極投資も推進。これまで役員だけだった株式報酬を従業員にも広げるほか、今後3年で生成AIのプロフェッショナル人財を5万人に増やす。成長戦略を実現する次世代リーダーも1000人育成する計画だ。
德永社長は「現状では持続的成長に課題があるため、事業環境の変化に合わせてリスクマネジメントを継続強化していく」と強調。その上で「デジタルをコアとして各事業を組み合わせて成長させる」と見通しを述べた。