2025.05.06 「AIエージェント」7000体以上稼働 パークシャが実績弾みに業務支援
新サービス「PKSHA AI Agents」で提供する多彩なAIエージェント 出所:PKSHA Technology
自律的に業務をこなせる「AI(人工知能)エージェント」がバズワード(流行語)として急速に広がり、導入意向を示す企業が増える傾向にある。そうした中、AI開発ベンチャーのPKSHA Technology(パークシャ・テクノロジー)が7000体以上のAIエージェントを稼働させてきた実績を土台に、企業のニーズに応じて多彩なエージェントの構築と実装を支援する新サービスを立ち上げると発表した。人間とAIが協調する可能性を探究する同社の戦略に迫った。
「『物知りなAI』 が『考えるAI』に進化して、それが『行動するAI』に変わっていく」。同社が開いた説明会で代表取締役の上野山勝也氏は、グラデーションのようなAIの変遷を、こう表現した。物知りなAIは、事前に定められた範囲の知識を用いて決められた作業を行う技術で、大規模言語モデル(LLM)が学習した知識に基づき質問に答える対話型のAIなどを含む。これが、考えて行動するAIへ徐々に進化。タスクを依頼すると複数の思考を展開して自律的に行動するAIエージェントに主役の座が移りつつある。
同社はこうした潮流の先頭に立ち、既にAIエージェントを日本で深刻化する労働力不足の解消に生かす可能性を追求。「PоC(概念実証)で終わらせず、社会実装にフォーカスしたい」(上野山氏)という姿勢で、全国に多数のエージェントを展開してきた。こうした実績を土台に提供するのが、今回のサービス「PKSHA AI Agents」だ。
営業支援から採用面接の代行まで
新サービスは、各社のニーズに合う形で提供。セミカスタマイズで新規にエージェントを構築する「プロジェクト」型と、既存エージェントを即座に派遣する「プロダクト」型から選べるようにした。さらに、AIエージェントをすぐに働かせたいというニーズにも応えて、1人目のエージェントに社内のヘルプデスクを担ってもらう導入方式を推奨している。AIと社員のやり取りで浮かび上がった課題を踏まえてその後の導入戦略を練り、段階的にエージェントを増やしていくという方式だ。
2人目以降のAIエージェントも、営業をはじめとした多彩な業務で活躍させることが可能だ。例えば、エージェントに求職者の1次面接などの採用活動を任せることができるほか、ベテラン社員の暗黙知を解き明かすといった用途も見込まれる。エージェントの導入費はタイプによって変動するが、年200万円から。導入企業は、日本人の平均年収の半分程度で24時間働くエージェントを活用できるようになる。
「協調」作業で労働力不足を解消
AIエージェントは、働き方を含む経済や社会を根本から変える可能性を秘めているだけに、「諸刃の剣」の側面もあるAIとの向き合い方ついて考える機会が増えそうだ。上野山氏は、業務全体をAIに置き換えるのではなく、両者が協調して業務を効率化していく手法「ヒューマンインザループ」を重視する考えを強調。「AIが得意とする部分をAIに任せ、人のチェックや思想が入る重要な部分は、より良い結果を生み出すことができる」と説いた。その上で、「日本では、人手不足で業務の維持が難しい領域が広い。この領域をAIエージェントで支えていきたい」と意欲を示した。
「人とソフトウエアが共に進化し、人が働く喜びを増幅するようなデザインがないか」を考え続けてきた上野山氏。新サービスを通じて人間とAIの「協働」の最適解を探る同社の挑戦から、目が離せない。