2025.05.18 AIで「行政事業レビュー」の質向上へ 政府がテック大手とアイデア検討
「行政事業レビューAIアイデアソン・ハッカソン」で講評する平将明行政改革担当相(中央)=東京都千代田区
政府が、無駄のない質の高い行政に向けて各府省庁の予算事業をチェックする「行政事業レビュー」にAI(人工知能)を役立てようと動き始めた。内閣官房が事業レビューにAIを生かすアイデアを求める「アイデアソン・ハッカソン」を開き、日本マイクロソフトをはじめテック4社の協力を得て具体的な解決策を検討したもの。出席した平将明行政改革担当相は、5500事業を超える事業レビューでAIを適切に活用することを視野に入れ、実装の可能性を探ることに意欲を示した。
行政事業レビューは、国の事業を点検して改善や見直しにつなげる取り組み。その活動にAIを生かすアイデアを求める「AIアイデアソン・ハッカソン」が16日、東京都千代田区のデジタル庁で開かれた。事業レビューやレビューシートの作成などに関する各府省庁の困りごとや課題に焦点を当て、約30人のエンジニアの協力を得ながら解決策となるプロトタイプを開発。技術面で、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の日本法人、AWSジャパンとグーグル・クラウド・ジャパン、日本オラクル、日本マイクロソフトが協力した。
チャットボットとの協働作業
焦点を当てた取り組みの1つが、多くの時間や手間がかかるレビューシートの作成にチャットボット(自動応答システム)などを取り入れるという試み。チャットボットがガイドブックや類似事業のレビューシートを参照し、事業に適切なロジックモデル(施策の因果関係を示す構造図)や成果目標・指標を提案。この結果、不慣れな人でもAIがたたき台を作ることで仕事を効率化できることが分かった。さらに、作成した内容の評価もチャットボットに担わせることで、アイデアの新規性の幅が広がることも確認。同時に、AIによるアウトプットの正確性を人間が確かめることの重要性を認識する機会にもなったという。
また、「さまざまな分野に学術研究があるにもかかわらず、具体的な予算事業に関するEBPМ(根拠に基づく政策立案)の実践に生かせていないのではないか」という悩みの解決策についても検討した。着目したのは、関係する先行研究をリサーチし、その要約を日本語で取得する仕組み。AĪで検索条件を自動的に最適化して高精度に関連研究を調べるとともに、検索結果の信頼度を合わせて表示できるという。他の論文提供サービスとも、システム同士をつなぐAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で連携し、検索範囲を拡張することも可能だ。
一気に成果を生むフェーズに
講評で平氏は、AIを巡る日本の状況にも触れ、「今はツールがそろっている状態。これから一気にアウトカム(成果)を出すフェーズが来る」との見方を示した。その上で今回の成果を踏まえ、「まずデジタル庁において、どう実装していくのかというところをやってもらう。さらには(他の)省庁にも水平展開していく」と強調。例えば、AIに歳出の削減方法を提言してもらうといった実装例を挙げた。続けて、培った成果を政府共通のクラウドサービス利用環境「ガバメントクラウド」や行政機関がITサービスを迅速に調達できるよう支援する仕組み「デジタルマーケットプレイス」に落とし込むとともに、レビューシートの質を高めてマクロな行政マネジメントに生かす考えも述べた。
今回のイベントは、昨年11月からデジタル庁で実施している「アイデアソン・ハッカソンシリーズ」の第4弾。今夏には、学生を対象に行政改革に関するアイデアソン・ハッカソンを開くことを予定している。