2025.07.01 JASM第2・第3工場に「地域住民の利益重要」 公明・河野議員インタビュー

公明党の河野議員は地域住民の利益を重視する

 公明党は与党として日本政府の半導体振興政策に賛成の立場だが産業界だけでなく工場周辺住民に利益をもたらす必要も訴える。同党で「半導体基盤強化プロジェクトチーム(半導体PT)」を率いる河野義博参議院議員に話を聞いた。

 河野氏は総合商社の丸紅でエネルギー分野に携わった後、公明党の呼びかけで政治に進出。同党の「総合エネルギー対策本部」事務局長も務め、半導体と電力をともに大量に必要とする人工知能(AI)も焦点に政策に取り組む

 半導体PTは2023年に発足。初代座長を務めた北海道選出の稲津久前衆議院議員が引退したあと、事務局長だった河野氏が引き継いだ。経済産業大臣政務官経験者を中心に構成する組織で、2週間に1度程度会合を持つ。ラピダスへの支援を念頭にした改正情報処理推進法は同党の「経済産業部会」と合同で議論した。

 半導体PTでは製造受託(ファウンドリー)だけでなく部素材から製造装置、自社工場を持たない設計開発(ファブレス)、後工程まで把握を図り、企業が社内外と連携し技術革新を図るオープンイノベーションや高等専門学校を生かした教育にも目配りする。

 過去2年余でキオクシア四日市工場(三重県四日市市)、キヤノン宇都宮工場(栃木県宇都宮市)、三菱ケミカル北九州工場(福岡県北九州市)を視察したほか、意見聴取した企業はラピダスをはじめJSR、イビデン、レゾナック、SUMCO、東京エレクトロン、アムコージャパン、富士フイルム、ローツェと川上から川下まで幅広い。

 中小規模の企業との交流もより増やす意向だ。

 企業、業界団体とも連絡窓口は6月時点で河野氏が一手に引き受けている。

 河野氏は企業だけでなく地域住民の利益も重視。例えば熊本県菊陽町のジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング(JASM)では交通渋滞や保育所不足、水使用の不安について声が挙っていると指摘。九州出身の河野氏は同町に足を運び意見聴取しているが、まだ利益について地元の実感は薄いとする。

 「我が町にTSMCが来てよかった」と思われない限り産業界の支持だけでは不十分と訴え、第2工場、第3工場の計画も念頭に住民に理解を深めてもらう大切さを強調する。

 4月から始まった同町の給食費無償化、保育施設でのおやつなど副食費への補助といった積み重ねに意義があるとし政府として福祉的政策のボトムアップで支援する考え。交通改善のため橋や道路の整備は公明党から輩出する歴代の国土交通大臣に要望している。

 河野氏はまた今後の半導体政策について「旗を振り続けることが重要」とする。官公庁では数年ごとに担当者が異動することがあり、議員が政治の立場から働きかけることは継続性に欠かせないとした。