2025.07.11 【電子部品総合特集】ハイテクフォーカス アルミ電解コンデンサーの最新技術動向について
はじめに
近年、自動車・車載関連分野においてカーエレクトロニクス技術が年々大きく進化・発展している。具体的には、各種電動化ユニットパワートレインのxEV化やEPS(電動パワーステアリング)、EOP(電動オイルポンプ)、EWP(電動ウォーターポンプ)、車載ECU(電子制御ユニット)などの性能向上が挙げられる。さらに、車載部品の電動化は必要不可欠なものであることからも、自動車1台当たりの電子部品搭載点数は増加傾向にあり、電子部品需要の拡大が見込まれている。
特に導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーのような高性能なアルミ電解コンデンサーに対する需要は今後も急速に拡大すると予測されている。各種電子部品の性能向上に伴う消費電力が増加傾向にあることやアルミ電解コンデンサーのサイズが回路設計時の制約になることがあるため、製品の小形・高容量化対応が求められている。また、これに伴いアルミ電解コンデンサーに要求されるリプル電流値は増加傾向にあり、高リプル電流化対応のため製品の高耐熱化や低ESR化などが必要である。
前述の通り車載用途で使用されるコンデンサーに対しては小形・高容量化、高リプル電流化、低ESR化対応が強く求められており、市場ニーズに対応したアルミ電解コンデンサー、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーの最新技術動向について以下に紹介する。
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー
▽125度4000時間保証 高容量品「GYGシリーズ」
▽125度4000時間保証 高容量品「GYFシリーズ」
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは、電解質に「導電性高分子」と「電解液」を採用している。導電性高分子はESRが小さく、リプル電流印加時の自己発熱が小さいため高リプル電流化が可能であることや、耐熱性が高いため耐久性が優れているというメリットがある。一方で、電解液は含浸性が優れており高容量化が可能であることや、電解液のアルミ酸化皮膜修復効果によって漏れ電流が低いといったメリットがある。そのため、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは両者のメリットを持ち合わせている。
当社の導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは125度4000時間保証のGYAシリーズを標準品としており、車載・民生・産機市場を中心に幅広く採用されている。長寿命対応の105度1万時間保証のGYBシリーズや、高温度・高リプル電流対応の135度または125度4000時間保証(φ6.3は2000時間)のGYCシリーズ、超高温度対応の150度1000時間保証のGYDシリーズなども上市しており、顧客要求や市場ニーズに応じて開発を進めているが、近年は顧客要求の中でも特に小形・高容量化、高リプル電流化が求められている。
当社は小形・高容量化の市場要求に対して、GYAシリーズの1ランク高容量のGYEシリーズ、2ランク高容量のGYFシリーズにて対応しているが、今回3ランク高容量のGYGシリーズを上市する。GYGシリーズは高容量箔(はく)および薄手電解紙の採用によって業界最高クラスの静電容量を実現し、GYFシリーズ比で最大12倍の高容量化を達成した。GYAシリーズおよびGYEシリーズ、GYFシリーズ、GYGシリーズの静電容量の比較を【表1】に示す。
また、GYFシリーズについて、従来φ6.3×5.8L、φ6.3×7.7L、φ8×10L、φ10×10L、φ10×12.5Lの5サイズであったが、新たにφ10×16.5Lを追加し、従来のφ10×12.5Lと比較して高容量、高リプル電流化を達成した。
▽135度または125度4000時間保証 高温度・高リプル品「GWCシリーズ」
当社では高温度・高リプル電流対応として135度または125度4000時間保証(φ6.3は2000時間)のGYCシリーズのさらなる高リプル電流化の市場要求に対してGXCシリーズにて対応しているが、今回さらに高リプル電流化したGWCシリーズを上市する。GWCシリーズは導電率の優れる新規リードを採用し、業界最高クラスの高リプル電流を達成した。定格リプル電流値について、GWCシリーズはGXCシリーズに対して最大で500mArms増大させており、定格リプル電流値の最大値は6100mArmsである。GYCシリーズおよびGXCシリーズ、GWCシリーズの定格リプル電流値の比較について【表2】に示す。また、GYCシリーズおよびGXCシリーズ、GWCシリーズについては135度または125度の併記保証でありユーザーの設計ニーズに応じて保証条件の選択が可能である。
アルミ電解コンデンサーUCNシリーズ
電子部品の増加や基板の省スペース化に伴い、他部品によるあおり熱の影響から105度を超える環境下になるとの情報もあり、アルミ電解コンデンサーにおいても125度品での市場要求が増加している。当社では125度品アルミ電解コンデンサーはUCZシリーズやUCHシリーズなどを上市しているが、今回UCNシリーズを上市する。
UCNシリーズは高容量陽極箔および薄手高容量陰極箔を採用し業界最高クラスの静電容量を実現した。UCHシリーズ比で最大1.7倍の高容量化を達成し、125度長寿命かつ本クラスの高容量品でφ6.3×7.7Lは当社独自のラインアップとなる。UCZシリーズおよびUCHシリーズ、UCNシリーズの静電容量の比較を【表3】に示す。
また、UCNシリーズではバッテリーライン(12V)での暗電流の市場要求に対して、従来の0.01CV(C:静電容量、V:定格電圧)保証に加えて、コンデンサー単体での保証(16V 0.001CV)を開始予定である。〈筆者=ニチコン〉