2025.07.31 【家電流通総合特集】量販店の後半戦施策 店頭販売力を強化

後半戦は来店を促し接客力で付加価値の高い商品提案をしていく

価格よりも接客を重視

パソコン、エアコンなど堅調

 主要家電量販店各社は2025年後半戦に向けインターネットと実店舗を連携させた販促を重視していくとともに、店頭での接客力を高め付加価値の高い商品販売に力を入れていく。

 各社の足元の販売状況をみると猛暑によりエアコンが全体をけん引している状況は市場全体の動向と変わらない。加えて10月にマイクロソフトのパソコン(PC)OS(基本ソフト)「ウィンドウズ10」のサポートが終了するのに伴うPCの買い替えが始まっており、各社ともPC販売が堅調だ。ただテレビ、冷蔵庫、洗濯機の大型商品は苦戦が続いている。

 各社のPOS(販売時点情報管理システム)データの速報値によるとヤマダホールディングスは4~6月期(1Q)は全体では3.7%増と堅調に推移。エアコン、PC、携帯電話がけん引した。エディオンも1QはエアコンとPCが2桁伸長だったが、テレビ、冷蔵庫、洗濯機はいずれも苦戦した。ケーズホールディングスもエアコン、PCが2桁伸長したほか、調理家電も前年を上回った。上新電機はエアコン、PC、携帯電話が2桁伸長だった。ビックカメラの3~5月期(3Q)はエアコンが堅調に推移し、家電は前年並みを確保したが、テレビなどは低調だった。

 量販店各社が今年度注力しているのは店頭での販売力強化だ。ヤマダHDは家電からリフォーム、家具、住宅まで「くらしまるごと」を提案する新業態店「ライフセレクト店」の出店を加速。来店する魅力を伝えていくことを重視している。他業界の大型商業施設との連携も進め、家電を起点にした総合的な提案を進める。さらに自社オリジナルブランド商品(SPA商品)とPB(プライベートブランド)商品の開発にも力を入れ、洗濯機や冷蔵庫など商品群を拡充した。後半戦に向けてもライフセレクトの出店を軸に拡大を狙う。

 エディオンは家電からリフォームまで提案するとともに、家電の訪問修理やエアコンクリーニングといったサービスを強化。PB商品「イーアングル」の商品群を拡充し、家電メーカーの隙間を縫った商品展開を加速している。リフォーム事業も大きく成長しており、家電に次ぐ事業として成長をさらに目指す考えだ。

 家電販売を中心に進めるケーズホールディングスは店頭接客に注力するとともにデジタル販促を強化する。「ケーズデンキあんしんパスポート」の会員拡大を目指すとともにアプリ版も提案していく。上新電機はリアル店舗とECとの融合を図るとともにデジタル化を加速。リフォームを新たな柱にする施策を打つ。接客力を高めていくための人材育成にも力を入れる。

 ビックカメラは現場主導型の体制に変更し接客を含めた店づくりを強化。ECも再強化し顧客拡大を目指している。コジマは接客力の向上に努めながら、住設、EC、法人の3事業を拡大する戦略を打つ。接客力を高めるための独自研修などを強化する。

 ヨドバシカメラは実店舗とインターネットの融合にいち早く取り組むとともに、体感型の売り場づくりにも力を入れる。豊富な品ぞろえと商品知識力の高い接客で顧客の囲い込みを図る。新業態の展開にも取り組み、昨年は東京・池袋に、美容やヘアケアなどのさまざまな商品を専門スタッフのサービスを通じて比較体験できる体験型店舗「Yodobloom(ヨドブルーム)池袋店」をオープン。今年はマルチメディア梅田に新業態の日本酒テーマパーク「Yodobloom SAKE 梅田店」を開店した。

ネットを活用

 各社とも価格よりも接客を重視した展開に移行しつつある。特にネットを活用しながら来店促進につなげようとしており、改めてリアル店舗の良さを追求している。あわせて店舗開発も課題で、スクラップアンドビルドで店舗効率を高めようとしている。後半戦も市場全体は大きく伸びない見通しで、接客と集客で販売単価の向上を目指す構えだ。