2025.08.27 政府が「GX戦略地域」制度を創設 データセンター集積地を募集
GX実行会議に臨む石破茂首相 出所:官邸のホームページより
政府は26日、脱炭素化で競争力を強化する産業などの集積を促す「GX(グリーントランスフォーメーション)戦略地域」制度を創設したことを明らかにした。石破茂首相が、同日に首相官邸で開いた「GX実行会議」で表明した。各地のコンビナートを再生しGX分野の新規事業の受け皿にするとともに、AI(人工知能)に不可欠なデータセンターの立地も促進したい考えだ。
新制度の運用に向けて政府は、GX産業の立地政策を「コンビナートなどの地域資産を有効活用しGX関連事業を創出」「電力系統などのインフラに配慮したデータセンターの適正立地」「脱炭素電源を活用してサプライチェーンを高度化」という3つに整理。GX戦略地域の選定要件も具体化し、同日に自治体や企業などからの事業提案の募集を始めた。提案内容を踏まえ、改めて公募を行う予定だ。
経済産業省などによると、選んだ地域に対して、20兆円規模の「GX経済移行債」の枠組みも活用した支援策と必要な規制改革を一体的に講じていく方針だ。
GXを巡っては、米国がトランプ政権下で気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱を表明したものの、EU(欧州連合)や中国などの各国はエネルギー安定供給の確保と産業競争力の強化に向けてしたたかにGX政策を推進。エネルギー自給率が低い日本は、気を抜けない状況に置かれている。
石破首相はGX実行会議で、「日本が潜在的に有する脱炭素エネルギーや技術に国内外の投資を呼び込むことで、日本経済を大きく成長させる可能性がある」と述べた。さらに2月に閣議決定した「GX2040ビジョン」に基づき、着実にGX投資を進める考えも強調。「GX投資のうねりを日本各地に広げ、さらに世界からのGX投資も日本に呼び込む」と力を込めた。
AIの普及に伴い電力を大量消費するデータセンターが急増する中、電力系統の増強と脱炭素電源の活用が焦点となっている。こうした課題の解決で鍵を握る構想が、電力系統や通信インフラを一体的に整備する「ワット・ビット連携」だ。新制度には、効果的なワット・ビット連携で都市部に集中するデータセンターの分散立地を促し、大規模災害や電力需給逼迫のリスクに備えたいという狙いもある。