2025.09.02 バレンズ、車載向け通信半導体を使い捨て内視鏡に 日系メーカーに照準
先月末来日したフリードマン氏は、インタビューで日本市場に期待を寄せた
イスラエルの半導体設計メーカー、バレンズ・セミコンダクター(バレンズ)は、自動車向け通信規格を採用した製品を、医療用内視鏡に展開しようとしている。需要が増す使い捨て型に向け、安全で高画質・低コストという優位性を打ち出す。内視鏡は日本勢が高いシェアを有し、日系メーカーへの影響もありそうだ。
ビジュアルデータを中心とした車載通信向け規格「MIPI A-PHY(A-PHY)」は、バレンズの技術がベースとされ、米IEEE(電気電子技術者協会)が長距離伝送用の標準とする。同社はA-PHY準拠の「VA7000」シリーズを手掛け、これを内視鏡向けにも展開する。
内視鏡はこれまで再利用型が主流だったが、近年、感染症リスクなどから使い捨て型への移行が進んでいる。そこで重要になるのは、性能を保証した上でコストを低減する取り組み。低解像度のものは既に普及しているが、バレンズは高画質の使い捨て内視鏡への貢献を狙う。
VA7000はノイズキャンセリング機能やエラー訂正機能により、安定的に伝送できる。映像品質にも優れ、「4K」レベルの画質でフレームレートは60fps。標準規格としてカメラメーカーなどの関連各社がA-PHYに対応した開発を進めており、エコシステムを活用した低コスト化も見込める。送信機は小型・低消費電力と使い捨て型に最適化した。
同社のシニアバイスプレジデント兼クロスインダストリー・ビジネスユニット責任者のギリ・フリードマン氏は「A-PHYは元々車載向けだが、課題は医療分野でも同じ。いかにノイズを排除して明確な画像を常に送るかが重要」と語る。
オリンパス、富士フイルム、HOYAの子会社ペンタックス・メディカル(東京都昭島市)は、内視鏡で世界市場をけん引する。バレンズは、こうした日系メーカーがVA7000シリーズを採用し競争力を強化する展開に期待を寄せる。フリードマン氏は「日本は内視鏡市場のリーダー的存在。だからこそ、使い捨て型への移行は必要不可欠」と強調した。
<執筆・構成=半導体ナビ>