2025.10.04 「ATRオープンハウス」開催、社会課題と向き合う多彩な技術が京都に集結
ケートボードで滑走するAI駆動ヒューマノイドロボット
国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)は2、3日の2日間、「ATRオープンハウス2025」を開催した。
京都、大阪、奈良の3県にまたがる京阪奈の丘陵に位置する関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)にあるATRの最先端研究と、イノベーション創出に取り組む関連会社・連携機関の事業を展示・デモや講演で紹介。今年で38回目。多くの来場者が訪れた。
4日には、ATR40周年記念事業・温故知新シンポジウムをATR大会議室とWebのハイブリッド形式で行った。
今年のATRオープンハウスは、「社会課題と向き合う科学技術の最前線」をテーマに展示・デモでは約60の研究開発を取り上げた。
人の能力を引き出すテクノロジーコーナーでは、スケートボードをするAI(人工知能)駆動ヒューマノイドロボットを実演。身長152㎝、体重40㎏、関節数24、最大トルク89.4Nmのヒューマノイドロボットがスケートボーダーの全身の身体の動きを「みまね」して、人と同じように転倒せずに特設スケートパーク(10×9×0.8m、R2.3m)を2.6/秒で滑走できることを見せた。
また、介護やリハビリテーションで人の移動・移乗を支援する3次元免荷装置「Flying Nimbus」を展示。空気圧人工筋を使ったコンパクト構造と力強いサポートにより自分で運動している感覚を持って運動学習が行えることをバランス支援の綱渡りパフォーマンス改善デモで紹介した。
接続可能な地域と暮らしコーナーにおいては、カメラによるAI画像認識とRTK-GNSS測位で花をリアルタイムに検出し、花粉を的確に花に秒速噴霧する「みつばちドローン」の実機を展示。高密植栽倍のリンゴ農園での授粉作業の実験結果を紹介した。
つながるインフラと社会コーナーでは、テラヘルツ帯通信デバイスを用い、150G㎐帯でのIP通信を実現した複数周波数帯無線LANシステムや、複数Wi-Fi最適制御/Wi-Fi・LTE・5Gシームレス切り替え/Wi-Fi+LPWAの5G融合型シームレス低遅延のマルチダイバーシティ(MD)無線LANシステム、小型コンピューター、バッテリー、無線LAN(Wi-Fi)装置を可搬型ケースに収納した災害実動機関向け可搬型ローカル通信システムなどの研究開発成果を開発実機を展示しながら紹介した。
講演は、2日にATRの浅見徹社長が「充実した健康長寿社会の実現とその検証の場としてのけいはんなへの期待」と題して講演。「日本の健康な高齢者2500万人が溌剌と働くと日本のGDPは4.2兆ドルから4.79兆ドルに上がる。健康長寿社会を目指し技術に裏打ちされた行動変革を促していきたい」と話した。
脳情報研究所の神谷之康神経情報学研究室長は「脳内世界モデルの外在化と共有」をテーマに講演した。3日は、宮下敬宏インタラクション科学研究所長が「インタラクションを理解、拡張して社会課題に挑戦する~アバター/ロボット /ソーシャルタッチによる新しい社会へ~」、矢野一人波動工学研究所無線方式研究室長が「サイバネティック・アバターの安定した運用を支えるワイヤレスシミュレーション技術」、経営企画・イノベーション協創部の鈴木博之代表取締役副社長が「ポスト万博シティけいはんなが目指すシームレス社会へのATRの貢献」をテーマに講演した。