2025.10.07 ものづくりの祭典「メイカーフェア」開催 感動を呼ぶ独創作品が一堂に

スマホで操作できる世界最小の人型ロボット「NISUN」

ゆる楽器の「ハンドルドラム」(左)と「ウルトラライトサックス」ゆる楽器の「ハンドルドラム」(左)と「ウルトラライトサックス」

「生卵」か「ゆでたまご」かを判別する「たまごAI」「生卵」か「ゆでたまご」かを判別する「たまごAI」

 モノづくりの祭典「Maker Faire(メイカーフェア) Tokyo 2025」が4、5日の2日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれた。電子工作などに興味を持つ「メイカー」と呼ばれる人たちが各地から集結するイベント。今回は260組が参加し、独創的な作品で来場者を魅了した。

世界最小の人型ロボが存在感

 世界最小の人型ロボット「NISUN」を開発した 名古屋工業大学大学院(名古屋市)に在学中の三矢達彦氏は、電子工作やロボットに関心のある来場者向けに展示を行った。

 用意したのは、現実の風景にデジタル情報を重ね合わせる技術「AR(拡張現実)」をNISUNに組み合わせたシステム。ロボットの頭部に設置したARマーカーを、スタンドに固定したスマートフォンで認識すると、操作用のスマホにゲームのフィールドとロボットを重ね合わせて表示される。画面にロボットが銃撃するアクションや障害物などをリアルタイムで再現することも可能だ。

 ブースでは、NISUNのフレームの3D(3次元)データや作り方の動画が公開される予定の「NISUN Community」のチラシも配布。現在は設立の準備中だが、参加者から「公開されたらぜひつくりたい」と期待する声が挙がった。

 ソニーセミコンダクタソリューションズは、IoT(モノのインターネット)向けボードコンピューター「SPRESENSE」用のオプション「SPRESENSE Multi IMU Add-on Board」を紹介した。これは、3軸加速度センサーと3軸ジャイロスコープからなる6軸IMU(慣性計測装置)ボード。ノイズの密度が極めて低いため、地球の自転を検出することもできる。

 さらに「慣性航法ライブラリ」を使用することで、「センチメートル単位」の誤差で自己位置推定し、100分の1度以下という精度で姿勢の推定を行える。

「ゆる楽器」にも熱視線

 SPRESENSEを生かした製品の展示も行われた。一つが誰もがすぐに演奏できる「ゆる楽器」。叩いた音を光や振動などで感じることができる「ハンドルドラム」と、鼻息を当てて歌うだけでサックスのような音を演奏できる「ウルトラライトサックス」を紹介した。

 ハンドルドラムは、ペアで使うと片方の振動が相手に伝わり、音が聞こえなくても一緒にリズムを刻むことができる。SPRESENSEは、制御や楽器開発用のライブラリで音の実装をする場面に活用しているという。

 また、同社のブースではハードウエア開発者のコミュニティーサイト「elchika」で行われた「SPRESENSE 活用コンテスト」の受賞作品も披露された。

卵をAIで判別する装置も

 中でも、IoT部門で最優秀賞を受賞したairpocket氏の「たまごAI(人工知能)」は、卵をセットするだけで「生卵」か「ゆで卵」かを判別できる装置だ。「世界に一つしかない自分専用のAIを作りたかった」とairpocket氏。時系列の振動データを特定のカテゴリーに分類するクラス分類というタスクで、工場のモーターの故障検知などで使われているトレンドの技術を日常に落とし込んだ作品となっている。

 airpocket氏がロボット部門で最優秀賞を獲得した「SLIMちゃんみっけ!」も展示された。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月着陸を目指した小型実証機「SLIM」に搭載された超小型ロボット「LEV-2」の実寸大スケールモデル「SORA-Q Flagship Model」を改造。本物と同様にSPRESENSEで制御できるようにした。SLIMを自動的に検出し写真を撮る機能を搭載するほどのこだわりようだ。

 マクニカは、AIや半導体を活用したさまざまなソリューションをアピールした。AIが普及する中、直接半導体を扱う企業への提案にとどまらず、AI活用のソリューションを求める企業からの相談も増えているという。そうした中で同社は、プラモデルやラジコンなどを製造販売するTAMIYA(静岡市駿河区)と共同で展開する「AIワークショップ」を紹介。加えて、専用教材として開発した「タミヤAIロボット」も披露し、注目を集めていた。