2025.12.09 世界初、AlN系高周波トランジスタを実証 NTT、ポスト5Gで無線通信応用に道筋

 NTTは9日、窒化アルミニウム(AlN)を用いた高周波トランジスタの動作に世界で初めて成功したと発表した。従来、AlNはパワーデバイス向け材料として期待されてきたが、今回の成果により無線通信向け応用の可能性が一挙に拡大した。

 AlN系トランジスタはミリ波帯での増幅が可能となり、ポスト5G時代に求められる通信エリアの拡大や高速化に寄与することが見込まれる。高い接触抵抗とチャネル抵抗という技術課題を、電極構造とチャネル設計の改良によって克服したことが大きいという。

 NTT物性科学基礎研究所・多元マテリアル創造科学研究部の谷保芳孝上席特別研究員は「窒化アルミニウムは半導体で最大級の物性値を持ち、もともとは電力変換向けに期待されてきたが、NTT独自技術で半導体化を実現した」と説明する。

 技術課題としては、Al組成の増加に伴う電流注入の困難化やチャネル抵抗の増大が指摘されてきたが、「高アルミ組成では電極との障壁が高くなり、電流注入が阻害される。またチャネル抵抗も増えるという根本課題があった」(谷保氏)という。

 NTTはこうした課題を解決するため、電極とチャネルの間にAlGaNコンタクト層を設ける構造や、チャネル全体に高濃度電子を生成する分極ドープ構造を採用。従来困難だった高Al組成でも高い動作特性が得られたという。

 今回の試作デバイスでは、Al組成が75%を超える領域で初めて高周波電力増幅動作を確認し、最大動作周波数はミリ波帯の79GHzに達した。谷保氏は「ミリ波帯での電力増幅動作を世界で初めて示した意義は極めて大きい」と強調した。

 今後は「ポスト5Gに向けた通信エリア拡大や高速化に資するデバイス化に向け、大電力動作が可能な構造設計を進める」として、パワーデバイスから無線通信デバイスまで幅広い応用を見据え研究を進めることにしている。

 今回の成果は米国で開催中の国際会議IEDM2025で発表する予定。