2025.12.16 英Colt、AI関連設備投資に対応したネットワークサービス強化 グローバルネットワークをワンストップで 

欧米アジア太平洋地域に展開する企業にワンストップでサービスを提供していくという水谷社長(右)とべイヤーCOO 

 グローバルで通信インフラサービス事業を展開する英Coltテクノロジーサービス(ロンドン、ケリー・ギルダーCEO)は、高速大容量データ通信が必要となるAI(人工知能)関連需要に柔軟に対応できるネットワーク基盤の提供を強化する。欧米アジア太平洋地域に敷設する独自ネットワーク網を強みに、日本国内ではハイパースケーラーと呼ばれる巨大クラウドベンダー向け、企業向け、金融取引向けに重点的にサービスを提案していく。 

 AIの利用拡大に伴いアマゾンやマイクロソフト、グーグルといったハイパースケーラーが国内へのAI関連設備投資を拡大していることを受け、データセンター(DC)間接続や陸揚げ局向け接続、長距離ネットワークのサービス展開を加速する。国内では東京と大阪間の自社ネットワークに加え、大阪と福岡間の長距離ネットワークも構築。西日本への設備投資を強化しており、福岡、広島、岡山の3都市ではメトロネットワークも構築している。 

 来日した水谷安孝アジア太平洋地域社長は「ハイパースケーラーは日本に莫大(ばくだい)な投資をしておりネットワーク需要が増えているため、要望に合わせたサービスを提供していく」と話す。この数年はBCP(事業継続計画)の観点から西日本地域へのDC需要が増え、自社ネットワークの敷設を進めてきた。2026年1月からは福岡でサービスを始める予定で、既に引き合いも多いという。 

 複雑化する企業向けネットワークの支援も強化する。100Gbpsの高速大容量接続やSD-WAN(ソフトウエア制御型広域ネットワーク)による接続、柔軟にネットワーク帯域を利用できるNaaS(Network as a Service=サービス型ネットワーク)など、同社が持つネットワークサービスを利用できる支援をしていく。海外展開する日系企業の支援も加速する。複数の国や地域にまたがり拠点展開する企業でもColtを通して一括で海外ネットワークの管理ができるようになる。 

 国内では新たにNTT東日本とNTT西日本と協業し、両社が提供するネットワークサービス「Interconnected WAN」をColtのアクセス回線として活用することになった。都市部での利用にとどまっていた回線サービスが全国規模で使えるようになるだけでなく、海外展開する企業、海外から日本に進出する企業にも高品質で安定したネットワークサービスを一貫して提供できるようになる。26年1月から日本全国でサービスを始める。「Coltを窓口にワンストップで国内外の接続が実現できる」(水谷氏)とみる。 

 金融向けでは、世界で80以上のマーケット(金融市場関連)データを提供している強みを生かしサービスを展開していく。マーケット・データを通信とセットにし顧客に合わせて提供できる。12月5日には韓国初の代替取引システムのNextradeとのマーケット・データ提供契約を結んだと発表した。アジア太平洋地域でのサービス拡大の足がかりとなるもので、他地域への展開もさらに加速させる考えだ。 

 水谷氏は「三つの柱で事業を強化し、日本企業が海外に進出する際のパートナーになりたい」と力を込めた。 

 Coltは100Gbpsの自社所有の光ネットワーク網を活用した法人向けネットワークやDC、音声サービスなどを、日本をはじめ、アジアや欧米など世界40カ国以上で提供している。23年に米通信大手ルーメン・テクノロジーズのEMEA(欧州・中東・アフリカ)事業を買収し、同地域での事業を強化、現在は230都市3万2000の商用ビル、50以上の都市ネットワーク、10の海底ケーブル、6カ国に12のケーブル陸揚げ局を持つ。 

 バディ・べイヤーCOO(最高執行責任者)は「他社と比べても大規模にグローバルネットワークを展開しており、AIデータセンターからエッジコンピューティングのネットワークまでセキュリティーを確保しながらサービス提供できる」と話している。