2025.12.22 【電波時評】週刊紙化で専門性を磨く、電波新聞の新たな挑戦

 電波新聞は本年10月から週刊紙として新たな歩みを始めた。12月22日付が2025年最後の発行となる。本年は本紙にとって、報道の在り方そのものを問い直す転換の年となった。

 電波新聞は、エレクトロニクス業界に根差した専門紙として歩んできた。そのDNAは維持しつつ、2018年の紙面刷新では読みやすさを重視し、大きな字体を採用するとともに、家電流通や地域発の情報発信を強化した。業界を軸にしながらも、より広い視点で社会と産業を捉える姿勢を明確にしてきた。

 同時に、成長著しいアジアへと視線を広げ、中国、韓国、台湾、ASEANとの連携を進めてきた。海外展示会の現地取材を継続し、政府機関とも連携しながら企業マッチングにも取り組んできたことは、専門紙としての独自性を高める一助となっている。

 一方、報道環境は急速に変化した。2019年に出遅れながらも電波新聞デジタルを本格始動した。コロナ禍を経てデジタルでの情報収集が主流となる中、速報性と分析力の両立が強く求められるようになった。こうした流れを踏まえ、本紙は日刊紙を終え、デジタルと週刊紙の二本柱へとかじを切った。

 速報はデジタルで、深掘りと分析は紙で。週刊紙化は後退ではなく、専門性を磨き直すための前進と位置付けている。週刊紙化により、紙面には一過性のニュースではなく、企業戦略や技術動向の背景、政策との関係性を読み解く余地が生まれた。業界関係者が次の一手を考える材料を提示することこそ、専門紙に求められる価値と考える。

 IT・電機産業はいま大きな岐路に立っている。日本が再び存在感を示すには、デジタル技術を核としたイノベーションが不可欠だ。

 週刊紙となって、AI(人工知能)時代の電力・通信インフラの現状をはじめ、ダイヤモンド半導体、大阪・関西万博の総括、台湾IT産業の現在地、加速する国内IT業界の再編、エアコン2027年問題など幅広く業界の潮流を切り取ってきた。

 年の瀬には少し気が早いが、新年に向け、電波新聞は業界の羅針盤としての役割を改めて自覚し、デジタルと週刊紙の両輪で、日本産業の挑戦と未来を伝え続けていきたい。ご愛読いただいている読者や関係企業の皆さまの健康と健勝を祈念しつつ2025年の筆納めとしたい。              (昧)