2026.11.08 政府、多発するサイバー攻撃で緊急対策決定 AI活用や戦略的対処を柱に
サイバーセキュリティーに関する関係閣僚会議に臨む高市首相(右) 出所:首相官邸のホームページ
政府は、サイバー攻撃による不正アクセスや情報漏えいが相次ぐ事態を受け、「サイバーセキュリティ緊急対策パッケージ」を決定した。人工知能(AI)を活用した対策の徹底や情報収集能力の強化に取り組む。被害を受ける恐れがある組織に対策を促す専門チームも新設し、攻撃に戦略的に対処する体制づくりを急ぐ。
今回の対策パッケージは、政府が6日に首相官邸で開いたサイバーセキュリティーに関する関係閣僚会議で決めた。同日の閣議では、緊急対策の具体化に向け、2026年度予算の予備費から100億円を支出することも決定した。高市早苗首相は会議で、関係閣僚に対して「パッケージの早期かつ効果的な実行を通じて、サイバーレジリエンスの向上と国民の皆様の不安の払しょくにつなげてほしい」と指示した。
具体的には、①AIも活用した基本的な対策の徹底②情報収集・集約、捜査・分析体制の強化③サイバー攻撃への対処の戦略的な実施④被害者支援・被害拡大防止策の強化――の4本柱に取り組む。
情報収集や分析能力を強化
一つ目の柱では、経済産業省所管の情報処理推進機構(IPA)が11月中に「トップガン人材チーム」を立ち上げる。同チームは高性能AIの利用環境を整備するとともに、模擬的な攻撃テストを通じてセキュリティー対策を強化する。政府の情報システムを対象に、AIによる脆弱(ぜいじゃく)性診断を前倒しで実施するほか、自治体がAIを活用したシステム診断を行えるよう支援する。
二つ目の柱では、政府に情報が集まる経路を広げて攻撃の兆候を先回りして探り、手口の分析能力を高める。そのため、攻撃対処の最前線に立つセキュリティー事業者などとの連携を強化するほか、高性能AIやデジタル技術を手がける海外企業との協力関係も広げる。
高速化・大規模化するサイバー攻撃に追いつくためには、被害が顕在化する前に攻撃を把握し対応する必要がある。三つ目の柱ではこの課題を取り上げ、攻撃の標的となる恐れがある組織へ国家サイバー統括室(NCO)から能動的に接触する「アウトリーチ・チーム(仮称)」を今月中に新設する計画を盛り込んだ。同チームは、気付いていない侵害の早期発見と対策を促す。
サイバー攻撃の被害のうち、政府による支援が特に必要と認められる場合は、官民の専門人材で構成する「官民サイバー救援隊(仮称)」を被害組織に機動的に派遣し、初動対応を支援する。26年度中の早期にNCOに事務局を設け、派遣に向けた準備を急ぐ。
流出情報を悪用する二次被害防止
四つ目の柱では、漏えいした個人情報を悪用した詐欺電話やフィッシングなどの二次被害に備える必要性を強調し、「通信事業者によるアクセス抑止策の在り方について法的課題を含め早急に検討する」と明記した。漏えい情報が掲載されたウェブサイトへのアクセスを強制的に遮断する「ブロッキング」は、憲法が保障する「通信の秘密」との兼ね合いが課題となるが、二次被害を防ぐ観点から議論を進める方針だ。
また、サイバー攻撃の把握に必要な情報収集能力の強化に向けては、高市首相がサイバー被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」関連法の改正を検討するよう指示した。
パッケージ策定の背景には、重要インフラ事業者からのインシデント報告や個人情報保護委員会への届け出が、10月以降に急増している現状がある。NCOは、アプリケーション開発時のセキュリティー対策の不足やウェブサイトの設定不備など、基本的な対策の不十分さに起因する事案を多数確認している。
AIの活用で弱点の発見から攻撃までにかかる時間が短くなり、未知の脆弱性が悪用されるリスクも高まっている。そうした脅威に政府がどこまで機動的に対応し、民間の技術や知見を生かしてサイバー対処能力を高められるか。その成否が、パッケージに掲げた「世界最高水準のサイバーレジリエンス」の実現を左右する。












