2020.07.09 【家電流通総合特集】家電流通市場「新しい日常」の売り方へエアコン中心に夏商戦に勢い

量販店ではエアコン販売が活発になっている

テレワークといった新たな需要への対応も必要テレワークといった新たな需要への対応も必要

地域店でもレジ袋の有料化に対応地域店でもレジ袋の有料化に対応

 家電流通市場は、2月下旬頃から新型コロナウイルス感染拡大による影響を大きく受け始めた。その後の緊急事態宣言の発出による外出自粛で、家電量販店では営業している店舗も都市部を中心に来店客が急減。臨時休業も多数発生した。地域電器店でも営業時間の短縮や訪問活動を控える動きが広がり、夏合展も相次いで中止となった。そうした中でも、宣言の全面解除後には店舗に客足が戻りつつあり、エアコンを中心に夏商戦に勢いが出てきている。地域店も、週末だけでなく長期間での個展開催など「3密」を避ける工夫で催事に臨んでいる。家電流通でも「ニューノーマル(新しい日常)」に対応した売り方が求められるようになっている。

 「今まで通りの店づくりでは対応できない」。そう語るのはヤマダ電機の山田昇会長だ。

 コロナ禍は様々な業種・業態に影響を与えた。家電流通への影響も大きく、これまでの需要構造からの変化も著しかった。

 家電関係でいえば、在宅勤務の浸透によるPCの需要拡大や関連する商材の販売が急増。ヘッドセットなどは供給が追い付かない状況になった。

[[調理家電など伸長]] 同時に「巣ごもり」による調理家電の販売が伸びた。以前に比べると「落ち着いてきた」(ビックカメラ)とするものの、ホットプレートやたこ焼き器など、炊飯器やオーブンレンジなどに比べると保有率の低い調理家電の販売が活発になった。外出自粛による運動不足を解消するために、フィットネス機器の販売も好調だった。

 こうした急激な変化に、量販店は売り場づくりで対応。フィットネス機器の売り場を広げたり、炭酸水を作れるソーダストリームなどの調理家電を通路のエンド側に展開するなど高まる需要に応えていった。

 6月1日、東京・六本木にオープンしたビックカメラセレクト六本木駅店。飲食店の多い地域性を考慮して2階は全てお酒フロアにした。

 ここでもコロナ禍を意識した対応が見られた。お酒メーカーとビックが共同開発したアルコール消毒液をオリジナル商品として販売。ニーズに応える柔軟な対応が量販店に求められていることがうかがえる。

 量販店にとってはネット通販の利用も急増した。それへのさらなる対応もこれからの重要なテーマだ。

 単なるネット通販だけでなく、ネットで注文し店舗で受け取るサービスの利用も拡大。ネット通販を利用することに変わりはないものの、自宅以外で受け取るというユーザーにとって都合の良い方法を選べる使い勝手は好評だ。商品を探す手間も省けるため、店舗での滞在時間を減らせる手段としてコロナ禍で利用が進んだ。同時に物流面の整備を進める量販店もあり、これを機にネット事業を一気に強化しようとする動きも出てきている。

 訪問巡回型の地域店にとっても、新型コロナで新たな対応が求められている。緊急事態宣言が解除されて以降、これまでと同じようにお客宅を訪問するようになってきたが、それでも以前の状態にまで完全に戻ったわけではない。

 通常は夏個展が各地で開催される7月だが、通常開催ではなく、お客を分散させる目的で1カ月程度にわたって連日行う地域店など、これまでにない取り組みに挑んでいる。電話中心の対応を行う店も多く、開催を控えるところもある。

 ただ、地域店の場合、量販店以上に地域差が経営に影響を与えている。都市部の地域店は緊急事態宣言下ではほぼ訪問巡回はできない状況だった。お客も訪問を嫌がる傾向が強かったが、地方の地域店では訪問巡回を変わらず継続するなど意識の差が出ていた。従来通りの活動ができなかった店は当然、売上げにもマイナスに働いた。

 マスク着用での訪問が当たり前となり、アルコール消毒なども徹底することが求められるようになったことで、地域店にとってもお客との接し方が変わってきている。それが常態化することも想定される。

 そうした状況を受け、地域店もホームページの開設や充実、ポスティング活動の強化など、できることに取り組んでいる。それらが実を結び、新規客や商品訴求チラシのポスティングによるエアコン注文の獲得などにつながるケースも出てきた。

 7月1日からは小売業を中心にレジ袋の有料化が義務付けられた。量販店はビックカメラとヨドバシカメラのカメラ系2社を除き大手5社は有料化に移行。地域店でも対応が進んでいる。

 コロナ禍で変わる需要構造や提案手法などに加え、こうした新しい時代の流れにも対応する必要がある。下期に向けて需要の底上げにつながる「ウィズコロナ」の取り組みが、今後ますます重要になる。