2020.07.09 【家電流通総合特集】各社の店舗戦略、枝分かれ効率的な店舗開発重視

ヤマダ電機LABI1日本総本店池袋はコロナ禍でさらなる改装を行った

ビックカメラは、地域特性に合わせた小型店の展開を加速(ビックカメラ セレクト六本木駅店)ビックカメラは、地域特性に合わせた小型店の展開を加速(ビックカメラ セレクト六本木駅店)

 家電量販店各社は、効率的な店舗開発を進めることで、売上げの拡大を目指している。新規出店を売上げ拡大のベースにする量販店がある半面、既存店の改装でエリアにおけるシェア拡大を進める量販店もあり、方向性が枝分かれし始めている。以前のような大規模出店が難しい市場環境であるだけに、各社の出店戦略は今後の業績に与える影響も小さくない。

 売り場面積が3000平方メートルを超える大型店の大量出店を売上げ拡大のベースにした時代から、現在は完全に市場の様相が変わってきている。

 全国的にも出店余地は減ってきている上、様々な業態が集まる複合商業施設への小型店の出店など、効率的な計画が重視されるようになっている。

 そうした中、大量出店を推し進めてきた最大手のヤマダ電機は、住空間全体を提案する新業態店「家電住まいる館」に既存店を改装する戦略へ、17年からかじを切っている。住宅メーカーのエス・バイ・エルや住設メーカーのハウステック、リフォームのナカヤマなどを傘下にしてきたことで、住空間を丸ごと提案できる体制を整えてきた。

 昨年末には大塚家具を子会社化したことで、高級家具のラインアップも充実。大塚のショールームも主要7拠点で家電を展示。家電と家具を融合した新店舗としてリニューアルしている。4日からは大塚のショールームでヤマダ電機のポイントを利用できるようにし、既存のヤマダ電機ユーザーが大塚を利用しやすくしている。

 ヤマダ電機は、新規出店するにもインショップ形式を主体にする方針だ。既存店を改装して店舗の魅力を高めることで、当該エリアでの販売シェアを増やしたい考えだ。既に旗艦店であるLABI1日本総本店池袋(東京都豊島区)や、同じ池袋にあるアウトレット・リユース&TAXFREE館などを改装し、コロナ禍で変化し始めた需要への対応を目指している。

 ヨドバシカメラも、昨年4月に買収した石井スポーツとのコラボを加速している。6月19日には東京・銀座に「石井スポーツマロニエゲート銀座店」をオープン。スポーツ用品を中心としながらも、アウトドア用途でシナジーの高いデジカメを店内に展示しているほか、「ネットで注文、店舗で受け取り」サービスを利用できるようにするなどして、利便性を高めている。

 ネット通販のヨドバシ・ドット・コム内には石井スポーツのストアや、石井スポーツ子会社のアートスポーツのストアを開設し、ネット事業の強化にもつなげている。

 ビックカメラは、日本橋三越本店(東京都中央区)の新館6階に、インショップ型店舗を今年2月にオープンし、富裕層を中心とした新たな客層へのアプローチを強めている。同時に6月には、国内3店舗目となる小型店「ビックカメラ セレクト」を東京・六本木にオープンし、地域特性に合わせた商品ラインアップで需要の獲得を目指している。

 ビックは、日本橋三越本店に出店した店舗のように、リアル店舗での高い接客力を生かせる展開に加え、小型店ではネット通販と連携した利用も進めている。同時に、販売効率や販売力の向上を狙い、電子棚札の導入も進めている。

 昨年秋には、既存店として初めて池袋本店(東京都豊島区)に電子棚札を導入し、今年2月から本格的な導入を開始した。今年夏から秋にかけて全店で導入を完了する計画だ。価格の柔軟性とネット通販とのさらなるシナジーを目指している。

 エディオンは20年度に8店を新規出店し、1店をスクラップ&ビルドする計画だ。リフォーム事業を強化しつつも、昨年末に買収した夢見る(大阪市淀川区)が展開するプログラミング教室の展開にも力を入れている。

 上新電機は新規出店を継続するとともに、楽天市場にも出店するなどネット通販事業の強化にも乗りだしている。楽天ポイントカードと連携することで、オンラインとオフライン(店舗)の両軸で売上げ拡大につなげていく方針だ。リフォームの拡大も今後の重点項目だ。

 ケーズホールディングスは郊外型を中心に今年度27店の出店を計画している。4店退店する計画のため、23店の純増見込みだ。郊外の単独店での展開が多いが、徐々にインショップ形式の店舗も増やしている。同時に準都市部にも店舗展開を進めている。

 ケーズは昨年6月、店舗内で展開しているPC教室「ひよこパソコン教室」を運営するテクニカルアーツ(東京都豊島区)を子会社化。プログラミング講座の充実を目指した取り組みも加速する。

 ノジマは6月に関連会社化したスルガ銀行との連携を進める半面、来春には京王線・府中駅前にノジマ運営の商業施設を開業予定。昨年9月に閉店した旧伊勢丹府中店が入居していたビルを借りての運営だ。モール出店を軸にした戦略に加えて、モール自体を運営する事業も推進している。