2020.07.09 【家電流通総合特集】’20後半戦 わが社の家電流通戦略パナソニックコンシューマーマーケティング
6つのコト提案を軸
パナソニックコンシューマーマーケティングは、「清潔」や「空気」「食生活」など六つのコト提案を軸に、顧客の困り事を解決して新たな需要の掘り起こしを目指す。吉清和芳社長は「『ウィズコロナ』の中で、新しい生活様式につながる需要をつかんでいく」と述べ、20年度は、「ニューノーマル(新しい日常)」に即した家電の販売やサービスの提供を加速する考えを示している。
同社は、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、春・夏合展の開催を中止。特に政府が緊急事態宣言を発令した4月7日以降、対応を強化し、在宅勤務やリモートでの営業活動など予防策を講じてきた。
リアルでの営業活動の自粛が続く中、系列の地域電器店「パナソニックショップ(PS)」では、新しい顧客接点を模索する動きが活発になっている。自店ホームページ(HP)を整備、充実させようという動きだ。
吉清社長は「お客さまの購買行動が変化してきている。地域販売店も新しい接点の在り方を検討し始めた」と説明する。
同時に、店舗紹介チラシや商品キャンペーンチラシなどのポスティングや、顧客データベースを有効活用したより効率的な活動を重視。同社もそうした取り組みを支援することで、「新しい客づくりにつなげていく」(吉清社長)と意気込む。
コロナ禍による消費行動の変化は、家電量販店でも同じだ。緊急事態宣言下ではネット通販の販売構成が増え、5月25日に宣言が全面解除されてからも引き続きネット販売の構成比は高いまま。巣ごもりやテレワーク、感染予防のための安全・安心に対する需要が顕著に高まっており、「お客さまに新しい需要のお役立ち商品を届けるための、ウィズコロナの活動がテーマ」と吉清社長。
こうした中、打ち出したのが六つのコト提案だ。「清潔」「娯楽」「空気」「食生活」「美容」「住環境」で、自宅でのホームビューイングや健康で快適な空気を実現する家電、まとめ買い需要への対応などを掲げている。
例えば、花粉やアレル物質、菌、ウイルスの抑制に効果がある「ナノイーX」搭載エアコンによる清潔な室内環境の提案、4Kテレビやブルーレイディスク(BD)レコーダをフル活用したホームビューイングなどだ。コロナ禍が推し進めたニューノーマルの需要は、緊急事態宣言の解除の後でも根強く、これを新たな商機と捉える。
ただ、新型コロナの感染拡大で海外ではロックダウンが発生。同社の生産工場も影響を受け、サプライチェーンの分断などでテレビやレコーダなどの一部商品で供給遅延が発生した。
吉清社長は「工場も順次再開している。販売店の皆さまには商品供給でご迷惑をおかけしたが、一日でも早く正常化に戻していく」と強調する。新しい商機を逃さないためにも、新商品の投入と合わせて商品遅延を解消し、夏商戦の活性化につなげたい考えだ。
PS、各地で個展をスタート
PSは、6月中旬から各地で個展をスタートしている。毎年恒例となっていた一斉個展「パナソニックフェア」の形式ではなく、今年は「安全を確保するための工夫として、ロングランでの開催に取り組んでいる」(吉清社長)。開催期間を長くすることで、顧客が集中してしまう事態を避ける狙いだ。
夏に向けて暑さが本格化してきたことで、エアコンや冷蔵庫、洗濯機といった夏物商材の販売は伸びてきている。巣ごもりによる調理家電や、時短や清潔を訴求した食器洗い乾燥機など、例年にはない商品の需要も拡大。電池や管球類など災害への備えとして「備災」の提案も進む。
リフォームや、太陽光発電の卒FIT案件の取り込みを目指した創蓄連携システムの提案も重視している。オール電化や水回りのリフォームにも注力し、取り組みの活性化を図る。
通常であれば9月から秋合展のシーズンに突入するが、今年は新型コロナウイルスの状況を慎重に見極めながら方針を固める意向だ。
吉清社長は「お客さまの安全確保が最重要。政府の指針を参考にしながら方向性を決めていく」とし、今後の状況を見て判断していく。
客足が戻ってきている量販店では、「非接触」をテーマにした売り場づくりをさらに強化する。商品動画の説明をQRコードから視聴できる仕組みや、モニターを展開して動画を流すなど映像やWebのコンテンツを生かした売り場づくりを実践していく。IoT家電による〝つながる〟高価値提案も進める。
ウィズコロナの中、「市場のポテンシャルはある」と吉清社長。地域店、量販店ともに六つのコト提案を中心に需要を掘り起こすことで「20年度は前年以上の成長を目指す」と、吉清社長は決意している。