2020.07.14 環境面に配慮した事業展開強化イーレックス 、 バイオマス発電で国際的な認証取得
大分県佐伯市のバイオマス発電所
新電力大手のイーレックスは、環境面に配慮した事業展開を強化している。国内有数の規模を持つバイオマス発電では、事業の信頼性を確保するため、国際的な認証の取得に取り組み始めた。さらに、二酸化炭素(CO₂)フリー電力の供給拡充に向け、卒FITの太陽光発電の買い取り事業にも乗りだした。
イーレックスグループの強みは燃料調達から発電、小売りまで一貫した事業展開にある。特に主力のバイオマスでは、高知市や大分県佐伯市、福岡県豊前市など計4カ所の発電所を運営するほか、21年7月には沖縄県うるま市で45%出資する発電所が運転を始める。
グループのバイオマスからの電力調達量は国内トップクラスを誇り、ほかの発電事業者から購入する電力に、自社のバイオマス発電分を加えると調達量全体の7割ほどに達する。こうした自社発電所で使う燃料について今春、三つの国際的な第三者機関による認証を、グループとして初めて取得した。
バイオマス発電は、燃やしてもCO₂の増減に影響を与えない「カーボンニュートラル」の考えを基にしており、サプライチェーン全体で活用する木材の管理などが必要になる。
さらに、燃料が生産される過程で違法な伐採がないかや、生産や製造、加工、輸送の各行程に携わった作業員らの労働環境に問題がないかなど、合法性の観点が重要視される。いずれの認証においても、こうした点を審査して承認する仕組みになっている。
主な燃料であるパームヤシ殻はインドネシアなど東南アジアから輸入している。この燃料については、オランダ政府が作り02年に発足した「GGL(グリーンゴールドラベル)認証」を取得。国内の発電事業者としては初めての取得になるという。
また、豊前市の発電所を中心に燃料としている木質ペレットは、グループの燃料調達子会社、イーレックスシンガポールが二つの認証を取得した。木質ペレットは木くずを固めて燃料にしたもので、世界中から輸入したり、商社から調達している。
取得したのは、責任ある森林管理を世界に普及させることに取り組むNGO「森林管理協議会」の認証。加えて、99年に運営を始めた国際的NGOの「PEFC(森林認証プログラム)」の認証も取得した。
イーレックスIR広報室は「社会問題的な視点も投資家などから注目されており、しっかりと対応した。今後もバイオマスを推進していくには必要な過程であり、最初の一歩という位置付けだ」と説明する。
さらに、電力販売面でも新たな事業を始める。7月から開始した家庭用の太陽光発電の買い取りだ。販売子会社のエバーグリーン・リテイリング(東京都中央区)が、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の期間を終えた設備から余剰電力を買い取る。
全国で展開し、グループから電力供給を受けている家庭にはプレミアム価格を適用して通常の買い取り価格に1kW時当たり約0.5円を上乗せする。
既にグループでは、工場や病院などを対象に、バイオマス発電などからの電力を「CO₂フリープラン」として販売している。
今回の買い取りを足掛かりに、家庭などでも販売を開始する方針で、「CO₂フリー電力」供給をさらに拡充させていく。
イーレックスIR広報室では「RE100加盟企業などの広がりで、特に工場などでCO₂フリー電力のニーズが高まっている。今回の買い取り量は、まだそう大きくはならないものの、今後、家庭向けにも販売を広げていきたい」としている。