2020.07.17 【半導体/エレクトロニクス商社特集】半導体、プラス成長を維持在宅増加などでDC向け需要増

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響でスマートフォンやテレビなどの民生用機器、自動車販売が落ち込み半導体市場への影響も懸念されている。しかし世界の半導体売上高を発表している米国半導体協会(SIA)によると、20年は1月こそ前年同月比マイナスだが、2月以降はこれまでのところ4カ月連続でプラス成長を維持している(グラフ参照)。

 ウイルスまん延防止に向けた在宅勤務・学習の普及や巣ごもり需要の拡大を背景に、大量のデータ通信を伴うネットサービスの利用が増大。これによりPCやデータセンター(DC)向けの半導体需要が伸長しているためだ。

 CPU最大手のインテルは1-3月のDC向け事業の売上高が前年同期比43%増、AMDは全社で同40%増を記録した。またGPUの米エヌビディアも2-4月決算でDC関連が同80%増え過去最高を記録。これら3社は間もなく発表の今期業績でも、2桁増収を見込んでいる。

 18年後半から低迷が続いていたメモリー分野も、スマホ向けは低調ながらDC用SSD需要の拡大などで、3D NANDの出荷が好調に推移する。韓国サムスン電子、SKハイニックス、米国のマイクロン、ウエスタンデジタルなどが恩恵を受けている。

 サムスンは、メモリーの伸びに支えられ4-6月(第2四半期)営業利益が前年同期を23%上回ったとしている(速報値)。

 また先月末、3-5月(第3四半期)を発表したマイクロンはNANDの売上高が前年同期比で50%以上増加。平均チップ単価も前期より1桁後半の伸びとなり、収益増に貢献した。

 台湾の調査会社トレンドフォースによると、エンタープライズSSDの需要は今後、在庫調整の影響などで減速する可能があるが、7-9月には新型ゲーム機へのSSD搭載に向け顧客の在庫積み増しがピークを迎える。

 また日本の「GIGAスクール構想」の前倒しでノートPC需要が増大して、NANDの堅調な成長を下支えすると見られている。

 世界半導体市場統計(WSTS)が先月発表した春季市場予測によると、20年の世界半導体市場は前年の2桁マイナス成長から一転して、前年比3.3%増の約4260億円となる見通しだ。けん引役のメモリーは、19年に32.6%減と大幅に落ち込んだ反動もあり20年は同15%増の1224億ドルを記録。全体の35%を占めると見ている。

半導体製造装置、中韓の需要が大幅増

 【半導体製造装置】

 世界の半導体製造装置市場は、半導体市況の悪化に伴い19年は前年比7%減の597億ドルと低迷した。しかし20年は1-3月の販売額が前年同期比13%増加。半導体の内製化を進める中国が同48%増と大幅に増えたほか、サムスンを擁する韓国も16%増を示した。

 サムスンは5GやAIの普及がメモリー需要を押し上げると見て、設備投資を活発化させている。昨年12月には中国・西安工場での3D NAND増産に向け9兆5000億ウォン(約8500億円)の追加投資を決定。今年に入ってからもコロナ感染拡大が一服した5月、韓国・平沢工場にファウンドリ専用ライン、翌6月には同工場に最先端の3D NAND工場を建設する計画を相次ぎ発表した。

 SEMIは、前工程ファブ装置の20年投資額は前年比4%減と2年連続マイナスを予想するが、サムスンの設備投資などを背景に3D NANDに関しては30%増と急伸すると見ている。

 また21年にはDRAMやロジック/ファウンドリ分野の回復が見込まれるとし、全体としては20年の投資額を24%上回り、過去最高の677億ドルに達するとの見通しを示した。

日本製は7%増

【日本製半導体製造装置市場】

 日本半導体製造装置協会(SEAJ)は、20年度(20年4月-21年3月)の日本製半導体製造装置販売額が前年比7.0%増の2兆2181億円と予想。年度後半からのメモリー投資の回復が下支えすると見る。

 21年度はさらに10%増加。22年は4.6%増え2兆5522億円と3年連増プラスを見込む(グラフ参照)。