2020.07.21 【家電総合特集】AI/IoT家電外部サービスや機能拡張などIoT化一層加速
家電量販店でもIoT家電の提案が本格化
白物家電のIoT化が、コロナ禍で一層加速しそうだ。社会生活を一変させた新型コロナウイルスは、IoT時代の家電の在り方を再度問いかけている。
これまでIoT家電は、クラウドに接続し、クラウド上にあるAI(人工知能)を使った制御であったり、ビッグデータから情報を取り込んだりと、家電を進化させ、生活を豊かにするといった視点が重視されてきた。利便性などは理解されるものの、家庭でのインターネット環境の整備が前提である上、ネット接続の手間もかかるため、IoT家電を利用するのは実際のところハードルが高い。
そうした状況を新型コロナが変えそうだ。今まで経験したことのないスピードで社会生活が変化し、職場や家庭でも新しい生活様式に対応する必要性に迫られた。急激な状況変化に柔軟に対応できるのが、IoT家電だ。
白物家電では、ロボット掃除機や空気清浄機などからIoT化が進んできた。現在では、エアコンや冷蔵庫、洗濯機といった大型家電を含み、かなりの製品がIoT化している。国内大手メーカーも主要な製品で対応しており、クラウド接続のメリットがいまだ見えない掃除機(ロボット除く)や炊飯器以外で、主力製品では対応機種のラインアップが増えている。
パナソニックの河野明アプライアンス社副社長日本地域コンシューマーマーケティング部門部門長は「新しい生活様式が定着していく中、ライフスタイルに合わせて進化するIoT家電はさらに重要性が増していく」と強調する。新型コロナでライフスタイルの変化スピードが上がっており、そうした変化に柔軟に対応するには、購入後も〝アップデータブル〟なIoT家電というわけだ。
こうした考えを持つのは、パナソニックだけではない。日立グローバルライフソリューションズの谷口潤取締役社長は、在宅勤務の定着により「家の中で、仕事と家事がモザイク模様にミックスされてきた」と現状を指摘。「人の生活スケジュールに家電が合わせられるようになればいい」などとし、仕事と家事が混ざり合う家庭内の状況に新たな需要があるとみる。
現状、IoT家電の利用率が高いのは調理家電だ。オーブンレンジがその代表格で、IoT化によってクラウドから調理レシピをスマートフォンなどにダウンロードし、その調理方法を本体に送信して加熱制御を自動で行う--といったことが可能だ。レシピの幅が広がる上、特定の機能ばかりを使用しがちな、オーブンレンジが備える多彩な機能を使えるというメリットもある。
例えばシャープは、オーブンレンジのIoT化からもう一段進み、電気自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」や冷蔵庫と連携した調理も実現している。さらに「ヘルシオデリ」と呼ぶ食材配送サービスとも連携している。調理家電では、こうした外部サービスとの連携がほかの家電よりも進んでおり、パナソニックもオーブンレンジで食材配送サービスを行うヨシケイと連携し、新たな需要の掘り起こしを進めているところだ。
食材配送サービスは、緊急事態宣言の発令で外出自粛を余儀なくされた際、急激に利用が増えた。それまで見向きもしなかったシャープやパナソニックのオーブンレンジを使うユーザーが、社会環境の変化でライフスタイルを変えざるを得ず、利用が広まってきた結果ともいえる。コロナ禍にマッチするIoTサービスと言えるだろう。
IoT家電の最大のメリットが、外部サービスと連携しやすいことだ。現状だと食材配送サービスや、洗濯機における液体洗剤や柔軟剤の自動再注文サービスなどがあるが、コロナ禍が利用を推し進めたとはいえ、まだ浸透し切っていないのが実情。
それを加速させるためにも、変化してきた需要構造を捉える必要がある。キーワードは衛生・清潔だろう。既にメーカー側も製品の訴求ポイントを変更してきており、衛生・清潔を全面展開し始めている。
外部サービスやIoTによる機能アップデートで、こうしたニーズに素早く対応すれば、それだけ需要を捉える商機にもなる。新型コロナが終息しても、猛威を振るったコロナの爪痕は、社会生活にくっきりと残るはずだ。その際、衛生・清潔に対する意識は依然として継続すると考えられる。基本となる手洗いや手指消毒は当たり前となりそうだ。
こうした変化にIoT家電はどう対応していくか。家電そのものの変化もあるが、外部サービスとのつながりで、同じ性能の家電でも利便性や使われ方が180度変わる可能性もある。
「短期的にはリスクが大きいかもしれないが、中期的にはチャンスになる」。三菱電機の松本匡専務執行役リビング・デジタルメディア事業本部長は断言する。「ニューノーマル(新しい日常)」のチャンスをいかにつかむかが、これからの家電メーカーには問われてくる。