2020.07.21 【家電総合特集】洗濯機 ニューノーマルで新たな需要、各社ともIoT化進む
訴求ポイントを見誤らないことが、コロナ禍の洗濯機提案では重要だ
コロナ禍で、洗濯機の使われ方にも変化が出てくる可能性がある。
夏は例年、洗濯物が増える時期だが、今年はさらに新型コロナの影響で、清潔性や衛生面を気にかける傾向が強まっている。単純に考えても、布マスクのように、これまでほとんど使ってこなかった衣類を洗う需要も出てきている。「ニューノーマル(新しい日常)」の定着により、コロナ禍で表面化してきた衣類の洗濯に対応する機能が、差別化要素として重視されることも予想される。
特に洗濯機はメーカー各社でIoT化が進み始めた。ドラム式洗濯乾燥機を中心に対応が進んでいるが、スマートフォンからの専用アプリケーションのみで使える洗濯コースを追加実装するなど、アップデートは既に行われている。購入後も進化する家電として、こうした対応は今後、コロナを意識した機能となってきそうだ。
日立グローバルライフソリューションズは、同社の洗濯機に付随するIoTサービスが、コロナ禍で見直されると期待している一社だ。
日立は昨年12月から、液体洗剤と柔軟剤を自動で再注文するサービスを開始している。現状では限定的な利用にとどまっているが、新型コロナがネット通販の利用を促進したこともあり、こうしたサービスにも注目が集まると期待する。液体洗剤と柔軟剤の自動投入機能を備えるドラム式と縦型洗濯乾燥機向けのサービスで、残量が少なくなると再注文する仕組みだ。
新たな需要の〝芽生え〟が期待される半面、需要自体は弱含みと言えそうだ。
日本電機工業会(JEMA)の統計では、4-5月の累計出荷台数は70万9000台で、前年から3.2%減った。そのうち、高級機になる洗濯乾燥機はほぼ前年並みで推移している。
6月は、外出自粛の反動から家電全般の動きが活発化した。特別定額給付金の支給もあったことから、洗濯機でもワンランク上の機種を選択する消費者が増えている。出荷台数が前年並みとなった洗濯乾燥機だが、出荷金額では前年から4.1%増えていることからも、そうした傾向がうかがえる。
コロナがもたらした清潔ニーズは、これからも続くことが見込まれる。
洗濯機といえば、これまで洗浄力や節水性、洗濯・乾燥容量などハード的な側面が重視されてきた。しかし、今後はそうした訴求ポイントを変えていくことも必要だ。
それは、新機能を実装する面もあるが、既に搭載している機能をどう見せるかということでもある。ハード的に進化させることは可能だが、それ以上に見せ方や訴求の仕方の方が、今後は大事になるはずだ。
JEMAは、今年度の洗濯機国内出荷台数は479万7000台と見通している。買い替えを軸にした安定市場であるため、見せ方のひと工夫で明暗が分かれることは十分あり得ることだ。