2020.07.21 【家電総合特集】日立グローバルライフソリューションズ谷口潤取締役社長
コロナ禍、新しいチャンス
白物家電の開発・製造を行う日立アプライアンスと販売会社の日立コンシューマ・マーケティングの2社が統合し、日立グローバルライフソリューションズが発足したタイミングで社長に就任し、1年以上が経過した。統合はスムーズで、製販一体での業務効率やスピードの向上が図れている。
今年1月ごろから新型コロナウイルスの影響が出始めた。第4四半期(1-3月)は売上げが減少し、特に2月から中国、3月からは日本で市場の落ち込みが顕著になってきた。
同時に中国や東南アジアなどでサプライ・チェーン・マネジメント(SCM)が混乱し、2月上旬から部品調達が遅延するようになってきた。代替メーカーの確保など、SCMのコントロールには苦慮した。
第4四半期の影響が大きく、19年度は売上げが4%減った。ただ、統合効果で収益力が向上しており減収ながら増益を達成した。
コロナ禍で、国内では自宅で過ごす時間が増えている。在宅勤務も常態化しつつあり、家の中で仕事と家事がモザイク模様にミックスされてきた。これは新しいチャンスと捉えて、既にこうした「ウィズコロナ」による需要も表面化してきた。
例えば、外出自粛の影響で冷凍食品の買いだめなどが起こり、大型冷凍庫に対するニーズが増えている。下部二つの引き出しを野菜、冷凍、冷蔵から選べる「ぴったりセレクト」搭載のKXタイプは4月以降、冷凍容量を増やせるという訴求で大幅に販売が伸びた。新型コロナに伴う需要の変化を実感している。
当社もそうした変化に素早く対応するようにしてきた。コロナ禍で当社がどんな社会貢献を果たせるかを考え、再生医療施設向けに展開していたクリーンルームの技術を応用し、医療施設向けに簡易クリーンルームを設置できるソリューションを開発した。1カ月ほどで企画し、5月の発表に至った。スピード感を持って対応し多くの引き合いを得ている。医療現場向けのフェイスシールドも5月11日から生産開始して無償提供し、社会貢献にも注力している。
IoT家電となり、ソフトウエアのアップデートで今まで以上に「痒(かゆ)いところに手が届く」製品が実現できるようになった。ウィズコロナで社会が変化する中、当社も新しい働き方を常態化させていくとともに、従来とは異なる新サービスや製品を提供することも重要になってくると考えている。
ウィズコロナにおける海外事業も、本質的には国内と共通項が多い。課題や取り組むことは共通しており、海外工場における製品の品質チェックもオンラインを活用して対応していた。逆にそれでも十分対応できることが分かったことで、スピード感や業務の効率化が一層図れると手応えを得ている。グローバル展開が加速する契機となりそうだ。
製販一体となった成果は出ているので、社会変化に対応しつつ、今年度はさらに収益力を高めていきたい。