2020.07.30 【電子部品技術総合特集】中長期視点でR&D強化ウィズコロナなど見据えコア技術に磨き
電子部品メーカー各社は、IT・エレクトロニクス技術の高度化がもたらす市場変革に照準を合わせた技術開発に力を注いでいる。現在のエレクトロニクス市場は、「AI(人工知能)」「IoT」「5G(第5世代移動通信システム)」などの新たな技術潮流により、大きな変革期を迎えつつある。そして、昨今のコロナ禍は、これらのデジタル変革の動きをより加速させることが予想されている。各社はこれらの変化を見据え、コア技術に磨きをかけるとともに、中長期視点のR&Dを一段と強化している。日本の電子部品産業は、今後も高度な技術やソリューション能力を武器に、イノベーションによる成長を目指す。
我が国の電子部品産業は、IT・エレクトロニクスや自動車、各種インフラ産業などの発展を支える基盤産業として、国内外で高く評価されている。
電子部品メーカー各社の成長の原動力となるのは、イノベーションの源泉である技術開発活動。各社は、既存顧客の課題解決に向けた技術開発に日々取り組むとともに、将来の技術変革や社会ニーズの変化などを踏まえ、中長期の開発ロードマップを策定。同ロードマップに沿って、必要な要素技術の開発やタイムリーな新製品開発を推し進めている。
電子部品のアプリケーション別戦略では、近年は「自動車市場重視」の姿勢が一層強まっている。電子部品各社は、世界のスマートフォン市場の成熟化が進む中で、「CASE」「MaaS」をキーワードとした大変革が進む自動車市場にフォーカス、次世代の車載用電子部品に対するR&Dに全力を挙げている。
一方、通信分野では、5Gの本格化に照準を合わせ、5G端末や5G基地局向けの技術開発が活発化している。同時に、5Gが引き起こすとされる様々な産業分野の構造変化へのマーケティング活動にも力が注がれる。
産業機器関連では、自動化ニーズの高まりに伴うFA・制御機器市場の拡大に照準を合わせ、小型・高精度で高速・高品質な製造装置やロボットなどに使用される産機・設備用部品の技術開発が活発となっている。最近は、医療機器/ヘルスケア分野を次期重点分野に掲げる電子部品メーカーも増加しており、先端医療分野や、低侵襲医療などに照準を合わせた専用部品開発やソリューション提案が活発化している。
加えて、IoTをキーワードとした新市場創出への関心も高まっている。IoTの本格化により、これまでネットワークされていなかった様々な機器・装置が相互につながるようになり、機器・装置・システムの価値向上や、人々の暮らしを大きく変革していくことが予想されている。世界的なメガトレンドとして「世界人口の爆発的増加」「先進国での高齢化進展」「都市化の進展」などが指摘される中で、これらのソリューションとしての次世代テクノロジーが、新たな成長産業を創出していくことが期待されている。
現在のコロナ禍の状況は、世界的に経済活動・消費活動を停滞させているが、そうした中でも、IT・エレクトロニクスメーカーや自動車メーカー各社の次世代に向けた技術開発活動は活発さが継続している。
逆に、コロナ禍による「人々の移動制限」「ステイホーム増加」「ソーシャルディスタンス重視」といった動きは、社会全体のデジタル変革の動きを加速させていくことも指摘されている。
このため、電子部品メーカー各社は、「ウィズコロナ・アフターコロナ」を踏まえた新たな研究開発の在り方を模索するとともに、コロナ禍が引き起こす様々な技術革新に照準を合わせたR&D活動に全力を挙げている。