2020.07.30 【電子部品技術総合特集】村田製作所岩坪浩取締役専務執行役員技術・事業開発本部長医療・ヘルスケア機器統括部担当

岩坪 専務

〝おもしろい材料〟が成長キー

 村田製作所は、研究開発トップが事業開発の先陣に立ち、注力市場の医療・ヘルスケア機器事業をけん引する。

 岩坪浩取締役専務執行役員技術・事業開発本部長医療・ヘルスケア機器統括部担当は「技術の村田を忘れてはならない。モノづくりを軽視することなく、コトづくりやソリューションビジネスをやっていくことが重要だ。先人が築き上げ、大きくして順調に成長を続け体力のある時に成長の可能性のある領域をたくさん見て、種をまき、技術の仕込み、ビジネスの仕込みをしておくことが大切だ。後々やろうとしても時間がかかる。技術を開発するタイミングと事業を結び付けていくことを忘れてはならない。技術を忘れたビジネスモデルを創出しても絶対に勝てない。自社の技術をどの分野に持っていけば次のムラタの新しいビジネスが創出できるかの観点で捉えている。きらりと光るムラタのユニークな技術が必ず入っている、だからこういうビジネスモデルが成り立つというロジックの展開を周知徹底している」と研究開発の基本姿勢を説明する。

 基盤市場の通信と、新たな挑戦市場の自動車、エネルギー、医療・ヘルスケアを成長エンジンに売上高2兆円を目指す中、研究開発において成長のキーにしているのが〝おもしろい材料〟。基盤市場、挑戦市場ともに材料から触れる強みを生かして他社と差異化し、研究開発を加速する。

 岩坪専務は「コアのセラミックス材料の圧電性、強誘電性、磁性、半導体性、絶縁性などのクラスタだけでなく、セラミックスに追い付く勢いでセラミックス以外の材料クラスタの研究開発に取り組み、材料から出てくる新機能を探っている。良い材料クラスタを見つけることが、なかなか表に出ないムラタの奥の院と言われる材料技術の研究開発方針だ。M&A、国内外の大学・研究機関、スタートアップ企業など、あらゆる手段を尽くして全世界を眺め回している。村田泰隆元会長がよく口にされていたセレンディピティ(偶発的発見)、アジリティ(俊敏性)を大切に行動していれば、タイミング、チャンスを逃さずモノにできる」と言う。

 10月には土地・建物含め総額400億円を投資した「横浜みなとみらいイノベーションセンター」(地上18階、地下2階)が竣工する。

 当初から1千人超の研究開発拠点としてこれからの同社を支える。