2020.07.31 【5Gがくる】<6>4K/8K映像が切り開くニューノーマル①

 5月、日立製作所はニューノーマル(新しい日常)としての「在宅勤務活用を標準とした働き方」を目指すロードマップを発表した。このように、緊急事態宣言が解除された後も、テレワークやオンライン授業を継続し、これを機会に働き方や学び方を改革しようとしている企業や大学も少なくない。

 その一方で、オンライン会議は画面がチラついたり、音声が途切れたりして、「緊張感に欠ける」とか、新たな上司や部下、新規取引先など、「面識のない相手との意思疎通がうまくいかない」といった問題も顕在化してきている。

 これまでは、対面での面談や懇親会などによる密なコミュニケーションが可能だったが、同じ会議であっても、オンライン会議ではそれが難しいとよく聞く。

 それは、なぜだろうか?

 コミュニケーションにおいて相手に与える影響度を実験した「メラビアンの法則」によると、言語情報はわずか7%であり、声の質や大きさ、テンポなどの聴覚情報が38%、顔の表情や身振り、手振りなどの視覚情報が55%も占めるらしい。そのため、映像や音声の品質が決して良いとは言えないオンラインのビデオ会議では、相手の好意や反感による顔の表情や息遣いの変化を見逃し、即座に臨機応変な対応を取ることができない。

テレワークに最適

 この問題を解決してくれるのが、ローカル5Gのユースケースとしても注目されている高精細の「4K/8K映像」だ。例えば、「4K」は800万画素(横3840×縦2160ピクセル)を有する。この横画素数と縦画素数の二乗和の平方根を画面サイズ(インチ)で割ると「1インチ当たりの画素密度(ppi)」となる。これは、映像がぼやけたり、ギザギザに見えたりするような品質の悪い映像か否か、人間の網膜の分解能と比較する場合によく使われる。

4K画面の画素密度

 40インチのディスプレイの場合、画素密度は110ppiである。20インチなら220ppi、10インチのタブレットサイズなら440ppiとなる。机上のテレワークを想定した視距離を30センチメートルとすると、網膜の解像度は350ppi当たりだから、PCやタブレットの4K映像は網膜に迫って、遠隔会議においても相手の表情がよく見える。

 つまり4K映像は、PCやタブレットを使うテレワークなどにはうってつけというわけだ。

変化を見逃さない

 このように、ヒトやモノのわずかな変化をも見逃さない4K/8K映像は、テレビ放送サービスはもとより、今後、ローカル5Gの普及によってニューノーマルになっていくに違いないテレワークやオンライン授業における遠隔コミュニケーション、遠隔医療、工場や工事現場での機械の遠隔操作には欠かせなくなるだろう。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉