2020.09.01 【業務用無線】増える簡易無線、デジタル化進む
無線局数は増加を続けている。けん引しているのが「陸上移動局」に分類されている携帯電話で無線局全体の99%弱を占める。これを除くと「基地局」「簡易無線局」「アマチュア無線局」が大きなシェアを占める。無線のアナログからデジタルへの移行期限となる22年11月30日が迫ってきているが、デジタル化率はほぼ半分。駆け込みの大需要が期待されている。IP通信や衛星無線用機種も開発され、簡易無線局を含む業務用無線機の評価は高くなり、需要は拡大している。
■増える簡易無線局
グラフ1は基地局、簡易無線局、アマチュア無線局数の推移。
簡易無線局の伸びは他を圧していることがよく分かる。
■無線通信への信頼度高まる
超大型台風、豪雨、豪雪、竜巻、地震、噴火など〝かつてない規模〟の自然災害や遭難事故が多発している。
平時はスマートフォンや携帯電話は生活に欠かせないもので手放せないが、緊急事態が起きると通話が増加して回線がパンクすると、情報ライフラインとしての機能が発揮されなくなることも広く周知されている。
無線機は電源さえ確保できれば、通信網が維持できることも認知されている。11年の東日本大震災以降、業務用無線機器への関心が高まり需要が伸びていることは、グラフ1の簡易無線局の伸びが示している。
通信方式も、従来のアナログ方式からデジタル通信方式への移行が進んでおり、より安定した通信や情報伝達ができるようになったことが、需要を押し上げている。音声通話だけでなくデータ通信やネット、電話網との連動も可能になった。
■業務用無線とは何
業務用無線には「特定小電力無線」「簡易無線」「小エリア通信システム」「一般業務用無線」「MCA無線」の5種類がある(第1表参照)。
「特定小電力無線」は、無線従事者免許も無線局の免許もいらない最も簡便なもので製品の価格も安い。家電量販店のラジオ売り場などにコーナーが常設されるようになり、利用者が多い(写真)。
伸びが著しい「簡易無線」は、デジタル化製品の発売が追い風になっている電波の出力は5W以下に強化されて実用性が高くなった。従来使われていたアナログ方式の簡易無線機器の利用停止時期が迫り、買い替え需要が起きている。デジタルとアナログ兼用機種でも買い替えが始まった。
利用面では無線従事者の免許が不要。高所や上空でも使え、データ通信もできる。
イベント用などに随時使用が可能なレンタルも認可されている。
IP網を使って電波到達範囲外とも通信でき、GPSによる位置確認やセンサーデータの転送が可能。仕事にもレジャーにも使えるのも好評。
「小エリア通信システム」は、特定小電力無線と簡易無線の中間の通信性能がある。
「一般業務用無線」は、公共的な無線通信用に許可される。
「MCA無線」は、全国に11ある移動無線センターが配置している通信制御局を利用して通信ができる方式で、中継局には発電機が備えられており、災害に強い通信ネットと評価されている。ドコモのLTEと3Gとの連動サービスを大幅に拡大し、超広域カバーの無線として注目されている。
■デジタル簡易無線活用のメリット
第2表に、人気のデジタル簡易無線のメリットをまとめた。
専門店では、企業や自治体などに、安全・安心のコミュニケーションインフラとして申請手続きの支援などを行い、積極的に拡販している。
無線従事者のライセンスが不要で、通信が楽しめることから「ライセンスフリー無線」という趣味にも利用されるようになった。業務用無線機市場拡大への期待は大きい。