2020.09.18 菱電商事がスマートアグリ事業拡大独自技術の植物工場設備納入
菱電商事の植物工場納入例
菱電商事は、エレクトロニクス商社としてエレクトロニクス(半導体デバイス)、FA、冷熱、ビルシステム事業の4事業に加え、新規事業としてネットワーク、スマートアグリ、ヘルスケア事業にも取り組んでいる。
15年から立ち上げた植物工場のスマートアグリ事業が急速に伸長している。
植物工場設備は、同社のデバイス、空調・冷熱、FA、エネルギーマネジメント技術とIoT技術を結集したもの。自社開発の植物栽培用LED照明、空調技術を活用した環境制御技術による生育制御は、同社の大きな特徴になっている。
遊休施設などを有効活用する「リノベーション型」(小-大規模、葉物野菜)、土地活用などの新規建設の「新築型」(中-大規模、葉物野菜)、小規模研究開発用「コンテナ型」の3種類の規模で同社は提案している。
現在は植物工場に必要な技術、設備を提供するビジネスが中心であるが、今後は自社植物工場を商業稼働させる計画だ。日産4㌧クラスの大規模施設として21年度中の稼働を目指す。
與五澤(よござわ)一元執行役員ICTソリューション事業本部長は「日本の農業は平均64歳以上と言われる就業者の高齢化と担い手不足があり、自然災害の甚大化など多くの課題を抱えている。本事業は日本の農業の課題に対応して、安心安全な野菜を安定供給し、国民の食生活に貢献することを目的に事業化した」と話す。
さらに、與五澤執行役員は「エネルギーマネジメントやIoT技術を組み合わせた植物工場システムでビジネスを行っている。環境制御技術に加え、LEDの照射角度、照度、照射時間などをIoT制御することで光合成をより活性化させ、栽培期間の大幅な短縮や収穫量増に貢献している」と続ける。
15年からコンテナ型小規模植物工場や栽培LEDの量産化をスタート。17年に農業の生産性向上、食品流通の合理化に向けた革新的な技術・サービスを提供しているファームシップ(東京都中央区、北島正裕代表)との協業体制を確立。19年にはファームシップと資本業務提携し、大規模設備のシステム開発や専門施工体制を確立している。
植物工場に進出する様々な企業から工場設備・システムを3年間で80億円以上受注、1日当たり10㌧以上生産できる設備規模の実績となっている。生産するのはリーフレタスが中心だが、今後はレタス以外の付加価値が高い品種の量産に向けた研究開発を加速させ、より植物工場投資の収益性を改善していく。
與五澤執行役員は「植物工場で生産されたレタスはいまだ露地栽培、施設園芸を合わせた生産量全体の5%弱程度と言われているが、収益性には課題がある。自社工場では自然エネルギーの活用、新たな環境制御技術による使用電力の削減、レタス以外の高付加価値品種の栽培技術の確立、IoTを活用した省人省力化などに取り組み、次世代植物工場のデファクトスタンダートを目指す。スマートアグリ事業の売上げは海外展開も含めた設備事業で50%、後の50%を植物工場の自社生産で占める計画」と述べている。