2020.11.05 【電源・パワー半導体技術特集】パワーデバイス技術、一層高度化電源や電源用部品、パワー半導体など
電源の小型、高効率化技術が進展する
電子機器の小型・高性能化や大電流・高効率化要求の高まりに伴い、パワーデバイス技術の高度化が進んでいる。電子部品・デバイス各社は、これらのニーズに対応。高効率・低損失の電源および電源用部品、次世代パワー半導体などの技術開発を強化することで、機器・装置の高性能化・高品位化への貢献を目指している。
電源技術
スイッチング電源は、ACやDCからDC出力を取り出す変換装置として市場を形成、拡大してきた。コスト、小型、低ノイズ、機能、信頼性、環境、省エネ、規格対応などの要求が複雑で多様化。これに対して、部品、回路、制御、性能、互換性、電力平準化、蓄電、分散化、高周波化、低損失化、高速応答など、様々な技術の組み合わせでニーズに応えてきた。
電源はAV機器から情報、通信、再生可能エネルギー、生活家電、医療機器、照明・表示関連、制御機器、自動車など、あらゆる分野で使用され、それぞれ特有の技術ニーズが存在する。共通しているのは、小型、高効率。
第5世代移動体通信システム(5G)におけるスマートフォンは、高周波帯域を用い、高速、大容量、低遅延、多接続が特徴。多機能化で電源(DC-DCコンバータ)の搭載点数が増加するとともに、電池の消費量が多くなるため、電池面積が大型化する。そのため、小型化が強く要求される。基地局もスモールセル化することから、環境条件、長寿命化、高効率化と同時に小型化が必須の条件。
自動車分野では、xEVなど環境車の普及が進む。
最近では車載電池、家庭電源の双方を用いた蓄電・電力供給システムなどの開発が活発化している。さらにxEVの充電には急速充電技術が広がっているが、新たに無接触給電システムの実用化が一部で始まった。
こうしたパワー系ユニットの電源技術は、高温環境、振動・衝撃など自動車特有の条件における信頼性が強く求められるのが共通点。そのため、各ユニットに実装する電子部品への信頼性要求が一段と強まっている。
再生可能エネルギー入力や高電力密度電池による省エネ給電システムにインバータ回路を組み合わせた双方向コンバータが実用化。さらにDC-AC変換損失を回避する高電圧直流給電システム用電源の開発も進展。
次世代パワー半導体技術
次世代パワー半導体として、SiC(シリコンカーバイド=炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)デバイスの技術開発が加速している。シリコン(Si)製に比べ、耐高温・高電圧特性や大電流特性に優れ、電力損失も大幅に削減が可能。モジュールの軽量・小型化と省エネ・高効率化を実現する次世代型パワー半導体として注目されている。
特にSiCパワー半導体は、データセンターのサーバー用電源、UPS、ストレージ系などでの採用が本格化。太陽光発電パワーコンディショナやEV用急速充電ステーション、さらには鉄道車両のインバータモジュールなどでの採用が進み、急速に需要が広がりつつある。
SiCパワー半導体は、自動車用途では、既にオンボードチャージャでの採用が本格化しているほか、将来的には車の電動化に伴いパワートレイン系での採用本格化も期待されており、車載アプリケーションでの早期実用化に向けたデバイスメーカー各社の技術開発が活発だ。
高電圧・大電流に耐え得るパワーモジュールには主にSBDとMOSFETが搭載されているが、現状はSiC-SBDの量産化が先行している。SiC-MOSFETの実用化には欠陥の低減が課題だったが、これらを解決する欠陥制御技術を駆使した高性能なSiCエピタキシャルウエハーが開発され、SiC-FET市場も立ち上がりつつある。