高周波デバイスメーカーでは、ブルートゥースやLPWA（ロー・パワー・ワイド・エリア）通信向けアンテナの技術開発に力を入れている。特に最近は、今後の大きな需要が見込まれるセルラーIoT機器に照準を合わせた新製品開発・投入が相次いでおり、IoT用セルラー機器での広い周波数帯域への対応が進められている。

　タイコエレクトロニクスジャパンは、次世代移動通信5G、NB-IoT、LTE-M向けの新しいアンテナを発表した。TE Connectivity／タイコエレクトロニクスジャパンのセルラーIoT機器向けアンテナは、周波数帯域600M-6GHzに対応し、IoT用セルラー機器に求められる広い周波数帯域と様々な帯域幅に対応する。

　セルラーIoTデバイスの発達により、5Gおよびセルラーの低消費電力広域通信（LPWAN）対応製品の需要が高まっている。NB-IoTとLTE-MはLPWAN無線技術規格で、NB-IoTは屋内・低コスト・長バッテリ寿命・高密度接続に、LTE-Mは機械間の通信に重点を置いている。

　5GおよびセルラーLPWAN接続の最適性能は、広い周波数帯域と信頼性の高いRF性能によって決まるが、同社のアンテナはこれらに対応可能。5G、NB-IoT、LTE-M向けに導入する新アンテナは、周波数帯域600M-6GHzの範囲で様々な帯域ソリューションを提供できる。

　ユーザーは、自社のシステムアーキテクチャに合わせて様々な取り付け仕様、ケーブル長、コネクタオプションの新しいアンテナを選択できる。アンテナは調整の必要がなく、最終製品への組み込みが容易。さらに埋め込み式だけでなく、複雑な複数のアンテナアセンブリ製品のサービスも提供できる。

　5Gへの移行で、性能が現行の4G LTEの10倍から100倍程度向上する。セルラーLPWANは、人々の生活をスマートに接続するうえで重要な役割を果たすことが期待されている。

　NB-IoTは、IoT機器向けLTE規格の一つで、低価格・低消費電力を特徴とし、携帯電話向けネットワークであるLTEと共存可能な規格となっている。LTEの周波数を利用するため、SigfoxやLoRaのように新たにネットワークを構築する必要がない。180kHzと狭い帯域幅を使い、速度は上り15.6kbps、下り21.2kbps。低消費電力のため、ウエアラブル端末や社会インフラ監視などの用途での使用に適している。日本では、ソフトバンクが18年4月から国内初のNB-IoTの商用サービスを開始した。

　LTE-Mも同様に、LTEの設備を利用できるIoT向け無線通信規格で、低消費電力と長距離伝送を実現する。送受信に用いる帯域幅を最大1.4MHzすることで、実装を簡易化し、モジュールの低価格化を実現する。社会インフラ監視や機器の異常検知システム、各種見守りシステムなどでの活用拡大が期待されている。

　日本モレックスは、LoRa周波数帯で動作する柔軟なホイップアンテナ「LoRa外付けアンテナ」を発表した。同アンテナは、細い線型のホイップアンテナで、LoRa周波数帯で動作し、高い性能と360度の優れた指向性カバレッジを提供する。

　LoRaWANは、米国のLoRaアライアンスが策定するLPWAのグローバルな無線通信規格で、アンライセンス系LPWA規格の一つ。非常に低速ながら低消費電力で長距離の伝送を行うことが可能。使用される周波数帯は地域によって異なり、日本では920M-928MHzが割り当てられている。

　同社のLoRa外付けアンテナ製品は、866MHz（プラス／マイナス10MHz）に対応する「216196001」と915MHz（プラス／マイナス10MHz）に対応する「2161960011」の2種がラインアップされている。嵌合方式は、216196001がSMAコネクタ（オス）、2161960011にはRP-SMAコネクタ（メス）が採用されている。ヒンジジョイントにより、両製品ともに垂直面で90度、SMAコネクタは、水平面で180度回転でき、全方向に優れたカバレッジを提供する。

　主な特徴はサイズは長さ196.00ミリメートル、本体重量は23.5グラムで動作温度はマイナス40-プラス85度に対応。最大2.5dBiのピークゲインおよび75％の放射効率で、強力で安定したワイヤレス接続を提供。高周波数帯の866および915MHzのLoRa周波数帯で動作し、長距離のカバレッジを提供。

　用途は、スマートシティ、スマートメーター、パワーデバイス、スマートロジスティクスなどの産業用、農業IoT、IoTおよびITインフラなどに適している。