2020.11.19 秋田県湯沢市に「木地山地熱発電所」新設東北電力、29年に営業運転開始へ

木地山地区での噴気試験の様子

 東北電力は、グループで再生可能エネルギー発電事業などを手掛ける東北自然エネルギー(仙台市青葉区)が、秋田県湯沢市に「木地山地熱発電所」(仮称)を新設すると発表した。出力は1万4900kWで、29年の営業運転開始を目指す。同市周辺は、発電所の新設や調査が相次いでいる「地熱開発のメッカ」であり、関係者の期待も高まる。

 東北電力グループの地熱発電所としては、国内で最初に商用化した松川地熱発電所(岩手県八幡平市)などに続いて6カ所目。出力の1万4900kWは同グループとしては最小だが、地熱業界全体では大規模クラスになる。

環境面に配慮し建設

 同グループは、秋田県南部の木地山地区で10年7月から、地熱資源の開発調査を開始。12年からは、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の助成も受けた。調査結果により、事業性が見込めると判断した。

 木地山地区の建設予定地は、栗駒国定公園内にあるが、12年から国が段階的に規制緩和を進め、国定公園内などでも地熱開発ができるようになった。東北自然エネルギーの担当者は「これまでの調査同様に、動植物や景観など環境面に配慮しながら建設を進めることになる」と話す。

 計画では、21年から環境アセスメントの手続きに入り、25年の着工、約4年の工事で完成させる予定だ。

 湯沢市周辺は、地熱の調査、開発が盛んだ。国内最大の八丁原地熱発電所がある大分県九重地域に次ぐ有望地とされ、初めて商用化された松川地熱発電所がある岩手県八幡平地域と並んで有数の地熱開発地として期待されている。

 JOGMECによると、湯沢市周辺には、東北電力の上の岱地熱発電所があるほか、19年5月には電源開発などが山葵沢地熱発電所を運転開始させた。さらに、小安地区で環境アセスを進めている出光興産などが地熱発電所の新設を発表。矢地ノ沢地区ではオリックスなどが資源量調査を始めている。JOGMEC地熱事業部は「(湯沢地区は)地熱開発のモデル地区であり、共栄しようという地元の理解が進んでいる。実績が積み重なっており、今回の計画は明るいニュースだ」と語る。

九電グループと並ぶ地熱の規模

 東北電力グループの地熱発電は、既に5カ所計21万1500kWに上り、全国の地熱発電設備の約4割を占めているとされ、国内の地熱発電事業者としては九州電力グループに並ぶ規模になっている。

 東北電力グループでは地熱だけでなく、再エネをできるだけ早期に、東北6県や新潟県を中心にして、出力200万kWの開発を目標に掲げている。中でも、風速や風向きの変わり方など風況が恵まれた地域が多く、「地理的な有効性を活用していく」(東北電力)狙いから、風力発電を主軸に据える。01年11月には秋田県能代市に、600kWの風車24基計1万4400kWの営業運転を始めている。

 太陽光も既に青森県八戸市(出力1500kW)で11年12月に運転を始めたのを皮切りに、宮城県七ケ浜町(同2千kW)、福島県南相馬市(同1000kW)など4カ所計4800kWを稼働させている。