2021.01.07 FA・製造装置市場 回復基調緊急事態宣言で先行き懸念も 21年、積極的事業活動
昨年1月の「ネプコン ジャパン」
FA・製造装置業界は、コロナ禍から立ち直った中国製造業やテレワークなどWeb活用によるネットワーク関連の需要などから回復基調にある。その矢先の緊急事態宣言発出で再び先行きの懸念は高まっているものの、各社は「21年もコロナが収束しない前提で事業を進めなければならないだろう」との認識で積極的に取り組む。
ネットワーク関連伸長
FUJI・須原信介社長は「リモートワークやWeb会議、Webセミナー、学校の授業などの普及で、PCやネットワークに関連する機器の生産向けに実装機の需要が伸びている。世界的な傾向だが、中国や台湾系企業がけん引している。21年もこの流れは続くだろう」と見る。
安川電機・上山顕治執行役員モーションコントロール事業部長は「今年度(21年2月期)上期は中国ではマスク特需でサーボモーターの受注が伸び、下期はコロナ禍から立ち直った中国が太陽光や半導体関連などを中心に需要が回復、拡大に転じ、モーションコントロール事業全体で下期ベースでは過去最高の受注で推移している。成長市場として半導体、液晶、電子部品、工作機械、金属加工などに重点を置く」とし、中国市場回復の流れに乗る。
中国や東南アが回復
日本トムソン・宮地茂樹社長は「21年3月期上期は受注も厳しく、生産調整から工場の稼働率を60%に落とさざるを得なかった。しかしコロナからいち早く立ち上がった中国製造業の需要が回復し、9月以降は急速に受注が戻った。中国に続いてシンガポールやマレーシアなど東南アジアが回復し、12月は前年同月比倍増の受注を記録した。12月には直動工場の生産はコロナ前に戻り、むしろ受注の急増で増産に入り、ニードルベアリングも1月から稼働を上げている」と話す。
JUKIは20年、コロナの影響で業績的にも厳しかった。濱学洋JUKIオートメーションシステムズ常務(JUKI執行役員)は「20年はコロナで明け暮れ、実装機関連の展示会も延期や中止が相次ぐなど営業活動も制約され、想定できない厳しい1年だった。7月以降、コロナから立ち上がった中国の製造業の需要が回復。中国に続いて韓国や東南アジアも需要が戻ってきた。8月には中国・深圳でネプコンが開催され、当社も中国現地法人と代理店を通じて出展し、多くの来場者でにぎわった。中国はスマホ本体やカメラモジュール、バッテリ基板など向けに実装機の動きが順調に伸びている。スマート家電やLED基板などもけん引している」と市況感を示した。
商社でも積極姿勢
FA商社でも回復の兆しを見せている。
菱電商事・正垣信雄社長は「中期経営計画初年度の20年度業績は、コロナの影響でかなり落ち込むと想定していた。上半期は、新事業以外は低迷し減収だったが、ここ数年続く利益率向上などで、利益面では想定よりも落ち込みが少なかった。21年度は事業戦略的に大きな変化はないが、新常態対応のためにDX(デジタルトランスフォーメーション、デジタル変革)推進加速を戦略テーマとしてコミットし、これまで取り組んできたソリューションビジネスをさらに強化する」という。
カナデン・本橋伸幸社長は「米中貿易摩擦に続いてコロナによる業績への影響は大きかったが、テレワーク導入による働き方改革やデジタルマーケティングの導入など、危機感をより強くして新たな改革に取り組む機会になった。21年度から新中期経営計画がスタートする。取り組んできた高付加価値ソリューションをさらに進化させて収益性の向上に努めたい」と語る。
20-22日の3日間、東京ビッグサイトにおいて「ネプコン ジャパン」「オートモーティブ ワールド」の製造系ビッグ2展の開催が予定されている。