2021.02.10 日本の産業を支える中小製造業  「日本ものづくりワールド」に見る

「機械要素技術展」を中心とした「日本ものづくりワールド2021」会場

 全国各地にはユニークな技術や製造プロセスで日本の産業を支えている中小製造業が少なくない。製造業の専門展示会「日本ものづくりワールド2021」(3-5日、千葉・幕張メッセ)が開催され、ユニークな技術を持つ中小製造業が集結した。

 エレクトロニクス産業で、独自の技術・製品によって中小製造業が果たす役割は大きい。

 日本ものづくりワールドは「機械要素技術展」を中心に毎年開催されている。主催者はリード エグジビション ジャパン。今年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言下での開催となり、直前に出展を取りやめた企業もあった。来場者も減ったが、熱心に質問しながら見学する光景が目立った。

 全国各地の産業経済振興センター、中小企業団体中央会、産業振興協議会などを通じて、エレクトロニクス分野のユニークな中小製造業が数多く出展した。

小さな世界トップ企業

 西道精工(山形県東根市、奥山浩哉社長)は91年設立。従業員16人ながら、数値制御フライス盤、機械検査、研削盤などの機械加工技能士資格取得者が1級6人、2級6人もいる技能士集団企業で、「小さな世界トップ企業」を目標に掲げる。押し出し成形機関連、2軸押し出し機用部品、金型部品のほか、IT関連部品ではダイボンダー、ワイヤボンダー部品、チップマウンター、X-Yステージなどの金属加工品を生産している。

HD用基板シェア20%

 ウエカツ工業(新潟県上越市)は43年に創業し、従業員は150人。ガラス絶縁体製品、ハードディスク用アルミ基板(サブストレート)、電気自動車(EV)などの発熱素子の冷却に使用される水冷式ヒートシンクほかの製造を手がける。

ウエカツ工業(新潟県上越市)の電気自動車などの発熱素子の冷却用水冷式ヒートシンク

 IoT、AI(人工知能)、5G、自動運転などデジタル化の進展でハードディスクの需要が伸びる中、同社はハードディスク用アルミ基板の製造で世界シェア20%を占めるという。水冷式ヒートシンクは、高熱が課題のパワー半導体などパワー基板や車載用基板向け需要が増加。

 平垣製作所(静岡市清水区、平垣徳之社長)は69年創業。家電や産業機器、産業用ロボット向けなどの直径5-400ミリメートルの精密部品加工が主体だが、先端部が直径0.4ミリメートルという微細加工技術を生かし、宇宙・医療分野にも取り組む。

 三和製作所(兵庫県淡路市、石井康文社長)は51年に設立された。工業用ミシンの精密金属部品の生産からスタートし、現在はEV車試作部品をはじめ電子部品製造装置、位置決めモーター、ロボットなどエレクトロニクス製品向けの精密金属製品を生産。5軸加工機を使用した3次元形状物の切削加工が多く、小径工具、高速回転での微細加工で高い面荒さ精度に対応できる強みを特徴とする。鉄系から非鉄系まで幅広く対応しており、大手電機メーカーとの取り引きが多い。

 アロー産業(鳥取市、矢谷英志社長)は79年設立。高放熱、バンプ、多層金属ベース、金属コア、UVLED用高放熱など多種多様なプリント基板の企画から製造、販売、実装、組み立てまで一貫して行う。一般的な白レジストでは、長時間UVにさらされて基板上に塗布してあるレジストが黄変し劣化が進むため、UV高反射レジストを自社開発して使用。基板の劣化を防ぐ独自の技術だ。

アロー産業(鳥取市)は多種多様なプリント基板を生産

 メタルベース基板の放熱特性に厚銅箔を配し、大電流に対応した高出力デバイスの搭載を可能とするメタル基板なども製作する。

0.2ミリ角のさいころ作る

キリシマ精工(鹿児島県霧島市)は0.2ミリメートル角の「さいころ」を作る精密加工技術を有する

 キリシマ精工(鹿児島県霧島市、西重保社長)は微細加工を得意とし、世界最少と言われる0.2ミリメートル角の「さいころ」を作る技術を持つ。06年創業、従業員55人。光通信や半導体などの難燃材精密加工では従来、様々な工作機械を使って複数回の加工を行うため、加工時間、コストを多く要していた。同社は独自開発の「カーブカット工法」により、短納期、低コスト、高品質で加工部品を提供する。0.2ミリメートル角のさいころはカーブカット工法で生まれた。