2021.03.18 【九州・山口産業特集】21年版九州経済白書5割強がDX取り組み
九州経済調査協会が刊行した21年版九州経済白書
公益財団法人九州経済調査協会(福岡市中央区、髙木直人理事長)が、21年版九州経済白書「コロナショックと九州経済-成長の鍵を握るDXと分散型社会」を刊行した。
九州と沖縄、山口両県に本社を置く企業803社から回答を得たアンケートや統計を基に、昨年来のコロナショックによる九州経済や企業活動の変化と、ビジネスモデルの改革を図る企業のデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)の取り組みと課題、対策などをまとめた。
白書は5章に分かれ資料を含む125㌻。このうち第3章は「新型コロナ感染拡大で進展する企業のデジタル化とDX」と題して実態を報告している。
DXに向けた取り組みを行う企業は域内に5割強あり、業種別では宿泊業(91%)や飲食業、情報通信業、金融・保険業、小売業、運輸業が6割以上に達する。主な取り組みは「キャッシュレス決済の導入」「社内情報の電子化・ペーパーレス化」「web・アプリを使った販促宣伝や接客」で、コロナ感染拡大で加速すると予想される内容として「リモートワークの導入」「デジタルオペレーション(業務フロー可視化)の導入」「AIと顧客情報(購買履歴など)による新製品・新サービス開発」「AIやビッグデータを用いた需要予測」が挙げられた。
DXの目的について、コロナ感染拡大前は「革新的な生産性向上(業務の効率化、業務プロセスの見直し、スピード経営など)」を挙げた企業が多かったが、感染拡大後は「売上高や利益の維持・増加」が最多を占め、「新製品・サービスの創出」「ビジネスモデルの抜本的な改革」と続き「攻めのDXを目指す企業が増加」している。
一方、DX推進に向けた企業の課題も多く「知識・情報・ノウハウの不足」を挙げた企業は35%に達し、以下「費用対効果が不明」「作業する人材の不足」「DXが困難な業種・職種」「指揮を執る人材の不足」「金銭的負担(予算がない)」と続く。ユーザー企業のDXへの理解欠如や目的が明確化されていないことも挙げられた。
こうした課題に白書は、特に中小企業経営者によるDXについての学びの大切さや、社内人材の有効活用からのスタート、ユーザー企業がシステムインテグレータ(SIヤー)への依存から脱却し、プロジェクト型の協業やオープンイノベーションの実施を目指すことを提言している。
白書はこのほか、新型コロナ感染拡大による九州経済への影響▽企業活動に与えた影響▽感染拡大が促進する分散型社会▽DXと分散型社会で目指す新たな成長について、各章で取り上げ、企業による新事業などの事例紹介も収めている。
販売価格は3300円(税込み、賛助会員は別価格)。問い合わせは同調査協会=092(721)4900。