2021.03.29 【DX実現に向けた技術導入】㊤ 米ペガシステムズ・ドン・シャーマンCTOに聞く

シャーマン CTO

説明責任が鍵握る

 様々な業種・業態で、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)が加速する中、新たな技術をスムーズに導入し、成果につなげることが重要となっている。オンラインによる顧客接点が増えシステムが複雑化する一方、カスタマエクスペリエンスの向上が求められる。ビジネスリーダーは、AI(人工知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、ローコードなど日々進歩する技術トレンドを的確に捉え、いかに技術導入を図るべきか。DXのリーディングカンパニーである米ペガシステムズのドン・シャーマン最高技術責任者(CTO)に話を聞いた。

 -ビジネスリーダーは技術の進化にどう対応すべきでしょう。

 シャーマンCTO 最新の技術を追求し、組織内での変更を計画している多くの最高経営責任者(CEO)、最高情報責任者(CIO)、CTOがいる一方で、新しい技術の進歩に関してほとんど、または全く行動を起こさない人も大勢いる。新しい技術のトレンドは、避けては通れない。多くの企業・組織が直面する最大のリスクは、イノベーションを中途半端に導入する、または完全に無視することによって、競合他社に負ける可能性があることだ。

 -そのリスクを避けるには。

 シャーマンCTO リスクを回避するための鍵は、説明責任の徹底だ。これは単に「私が責任を取る」という、漠然としたアプローチ以上のものを指している。説明責任は、インテグレーション、イノベーションの採用、さらにはガバナンスなどに伴うものだ。

 -具体的には。

 シャーマンCTO 現代の企業・組織におけるAIの活用は、効果的なガバナンスが必要。しかし、AIの規制は依然としてグレーゾーンのままであり、企業・組織内の経営幹部もAIに関するガバナンスの説明責任を果たせていない。これは民間企業がテクノロジーを規制するためのコントロールを完全に失うことを意味している。

 説明責任が重要になるもう一つのケースは、企業が新しいテクノロジーを統合する場合。「既存のレガシーシステムとのインテグレーション」や「他システムとの互換性」など懸念事項を明確にし、新たな技術の正常な統合に向けて、説明責任を担う必要がある。

 -新しい技術を利用して差別化を図るには。

 シャーマンCTO ビジネスリーダーが初期段階にある最新テクノロジーにアンテナを張り、それらに対する説明責任を確実に果たすことが重要となる。結局のところ、イノベーションは新しいからこそ革新的なのだ。テクノロジーが主流になってからでは、企業・組織は、組織内でテクノロジーを効果的に使用する方法を完全に理解するという点で、取り残されてしまう。

 -新たな技術を積極的に導入すればよいのでしょうか。

 シャーマンCTO 新しいテクノロジーが効果的であるためには、企業・組織はその過程で補完的なテクノロジーを採用し、サポートする必要がある。

 -現実を直視し対応することが重要ですね。

 シャーマンCTO テクノロジーに対する説明責任は、単に当事者意識を持つ姿勢だけでは不十分。企業・組織にとって何が最善かを積極的に調査し、準備するプロセスが重要だ。一つだけ確かなのは、テクノロジーは進化し続け、新しいトレンドが出現し続けること。企業・組織が説明責任を受け入れてその価値を最大化する準備をしない限り、時代に取り残される可能性がある。(つづく)