2021.04.14 【メディカル・ヘルスケア用部品・材料特集】各社、R&Dなど一段と強化新技術の創出に期待

医療用マイクロ流路

 電子部品・材料業界では、医療機器・介護機器・ヘルスケア関連機器市場を中長期の事業拡大のための重点分野に位置付ける企業が増加している。医療機器の電子化やICT化は、付加価値の高い電子部品の需要を安定的に拡大していくことが期待されている。ホームヘルス関連では、ウエアラブル型ヘルスケア機器の需要増に伴う新たな電子部品の創出への期待が大きい。医療/ヘルスケア技術とIT・エレクトロニクス技術の融合が進む中で、電子部品・材料各社は、同市場に照準を合わせた営業・マーケティングやR&D活動を一段と強化する。

 電子部品・素材メーカーにとって、技術の高度化とグローバルでの安定した需要増大が期待される医療機器/ヘルスケア産業は今後の有望分野の一つ。特に先端医療における検査・治療機器や手術機器などの高度化は、最先端のデバイス・素材技術を求めている。

 先進国を中心に世界的な少子高齢化が進む中で、医療産業の役割はますます重要性が増す。中でも早い速度で高齢化が進展する日本では、医療技術の進歩が一層求められる。医療機器は、国内にモノづくりが残る産業分野の一つとしても重要。

 医療機器市場の裾野は広い。病気の診断や検査用の機器・装置をはじめ、治療用機器、手術機器、画像・映像関連機器、人工関節や人工骨などの医療器材、歯科材料、介護/アシスト用ロボットなど様々な製品分野がある。新型コロナウイルス感染検査に使用される核酸増幅(PCR)検査機でも多くの電子部品が使用される。さらに、外科手術時に医師の負担を軽減する手術用機械や、在宅医療・遠隔医療用ネットワークシステム、自動体外式除細動器(AED)などがある。

 ヘルスケア・ホームヘルス関連機器も、血圧計や低周波治療器、電子式体重計/体組成計など多様であり、最近は腕時計型のウエアラブル型健康機器の需要も増えている。

 医療用モニターや内視鏡では、超高精細の「8K」の活用も進んでいる。内視鏡システムでは、高精細な8K映像技術を活用することで、より微細な病変が発見可能となる。遠隔医療でも、8Kによる高精細画像やリアルな色表現が、的確な診断に寄与するものとして期待されている。

介護ロボット動向

超高齢化社会到来の中で関心を集める介護ロボット(FUJI移乗サポートロボット)

 介護・福祉ロボットも今後の成長期待分野。医療系ロボットには、フォースセンサーや角度センサーなどの高性能な産業用センサーが多用される。画像系装置の磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影(CT)装置、超音波診断装置向けの電子部品開発も進展している。

 電子部品各社は、高周波技術やセンサー技術、微細精密加工、微細精密回路、高速伝送、光学技術などを駆使した医療用センサーやコンポーネントの開発を推進。機器の高精度化や患者の負担軽減に向けた技術開発を推進する。

 超高齢化社会の到来で介護ロボット(移乗支援、移動支援、入浴支援、見守りなど)の需要が拡大し、これに伴う半導体や電子部品の成長が期待されている。

 矢野経済研究所によると、19年度の介護ロボット市場規模は、国内メーカー出荷金額ベースで前年度比37.6%増の18億5400万円となり、20年度は前年度比8.4%増の20億1000万円と推計している。

 21年度以降も成長を続け、23年度は19年度比138.1%の25億6000万円まで拡大すると予測している。

 超高齢化社会における介護負担の増加や介護従事者の不足が深刻化し、最近はコロナ禍で人と人の接触を避ける目的から介護ロボットを導入するケースも増えている。

 公的な各種補助金が用意されていることも需要を後押ししている。

 各種補助金は介護ロボット導入支援事業、人材確保等支援助成金、エイジフレンドリー補助金、障害福祉分野のロボット導入支援事業などがある。

 3月中旬に東京ビッグサイトで開催された介護系の展示会には、コロナ禍ながら多くの来場者があり、関心の高さをうかがわせた。部品実装機のメーカーであるFUJIは16年からお年寄りの移乗サポートロボットに参入しているが、1年半ほど前から急速に受注が増加し、現在は月産50台以上、100台という月もあるという。