2021.04.16 事務機大手各社、新たな成長戦略打ち出すデジタル技術進展を捉える
富士フイルムBIは、新ブランド「Apeos」製品を発表した
事務機大手各社が新たな成長戦略を相次いで打ち出している。リコーは「デジタルサービスの会社に必要な経営基盤強化に集中する」(山下良則社長)。富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)の真茅久則社長は「グローバルに拡販しシェアを上げる。将来の成長を見据え、ITソリューションを強化する」と強調する。各社はデジタル化など急速な技術の進展を大きな転換期と捉え、成長戦略を加速させる。
コロナ禍でオフィスビジネスが苦境の中、各社は「環境」「デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)」などを切り口に、中・長期戦略を再構築している。
新規事業の成長加速
キヤノンは、今年からスタートした「グローバル優良企業グループ構想PhaseⅥ」で、事業ポートフォリオ転換の第2段階として、プリンティング、産業機器、光学産業、メディカルの4分野の新規事業の成長を加速させる。5年計画の中間点である23年には17年の業績を超え、最終年度の25年には、07年を上回る史上最高の売り上げを目指す。全体に占める新規事業の比率は、売り上げで36%、営業利益で38%以上を予定する。
デジタル化の急速な進展に伴って多様なニーズが生まれており、「技術の化学反応を起こし、新たな製品・ソリューションを提供していく」(同社)。
キヤノンマーケティングジャパンは「高収益な企業グループ」を掲げ、成長戦略としてITソリューション事業に一段と注力する。
リコーは、4月から新中期経営計画(第20次中計)を開始し、デジタルサービスの会社へのシフトを打ち出している。この一環として、五つのビジネスユニットから成る社内カンパニー制を導入した。
山下社長は「本社はグループ経営に特化し、ビジネスユニットによるお客さま最適の経営を徹底する」と提供価値の向上を強調。オフィス事業で培った技術を生かしたデジタルサービスの開発を推進する。このため、国内社員3万人のデジタル資源の可視化とリテラシーを強化するほか、日欧への積極投資、OEM事業などに力を入れていく。
欧米などにも販売拡大
富士ゼロックスから社名変更し、1日付で新発足した富士フイルムビジネスイノベーションは、米ゼロックスとの合弁解消を機に、これまでのアジア・パシフィックに加え、欧米などへと販売領域を拡大させる。1日に行った新ブランド「Apeos(アペオス)」製品の発表会で、真茅社長は「グローバルに拡販してシェアを上げ、社名、ブランド認知の向上を図っていく。将来の成長を見据え、ITソリューション、サービスをますます強化する」と述べた。
6月に就任する富士フイルムホールディングスの後藤禎一次期社長兼CEOは、メディカルシステム事業の成長加速と事務機事業の強化などを掲げる。会見では「全社規模でのDX推進」に意欲を示した。
セイコーエプソンは、将来にわたって追求する〝ありたい姿〟として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向けて長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定した。小川恭範社長は「環境への貢献に重点を置き、その上で、イノベーション実現のためにデジタル技術を活用し、持続可能でこころ豊かな社会を共創していく」と説明する。「環境」「DX」「共創」を重点的な取り組みと位置付ける。
コニカミノルタでは、事業ポートフォリオ転換による持続的な成長およびDXによる高付加価値ビジネスへの転換を目指す新たな中期経営戦略「DX2022」(20~22年度)に取り組んでいる。画像IoTプラットフォームと技術の組み合わせで「DXをより進化させ、真の社会課題解決企業」(山名昌衛社長)を目指す。「顧客接点、技術、人財の無形資産を磨き上げていく」(山名社長)戦略だ。