2021.04.23 省エネ教育で家庭のCO₂排出削減大規模実証して教材作成、東京ガスなど

省エネプログラムを受講する子供たち

カードゲームをしながら学ぶこともあるカードゲームをしながら学ぶこともある

東京ガスなどが作成した教材東京ガスなどが作成した教材

教材は、大規模実証の結果を踏まえて完成された教材は、大規模実証の結果を踏まえて完成された

教材の一部教材の一部

 国によるカーボンニュートラルの取り組みが加速するなか、東京ガスは22日、小学校や中学、高校生向けの環境教育の教材を作成した、と発表した。省エネ行動などを促す教育プログラムを独自に開発し、4年間にわたって教育現場で大規模に実証し、完成させた。受講した児童・生徒の家庭では排出する二酸化炭素(CO₂)の削減効果も、国内で初めて確認できたという。エネルギー企業が中心となって、現場で使う本格的な教材を作成するのは珍しい。

 東京ガスは、エネルギー関係の調査などを手掛けるシンクタンク「住環境計画研究所」(東京都千代田区)と家庭分野での省エネの重要性について調査、研究を続けてきた。国民全体に広く普及するため、学校での教育導入が重要だとして、2017年に、環境教育の専門家らでつくる「省エネ教育プログラム検討委員会」を発足。これまでの知見を生かし、より効果的な教育プログラムの開発を進めた。

 プログラムは、行動経済学のナッジ理論などに基づき、児童・生徒たちに自発的に望ましい行動を選ぶよう促す仕掛けが盛り込まれている。

 地球温暖化問題を学ぶ一方で、給湯器の温度を下げ、シャワーの時間を短くしたり、テレビの視聴を減らすといった身近で取り組みやすい省エネ行動を学び、取り組んだ行動の成果などをシートにまとめる。電気、ガスなどのメーターの読み取り方も教わって、実際に家庭で消費量をチェックする体験もする。
 エネルギーを最小限にした調理体験や、省エネ行動がデザインされたトランプを使って「ゲーム感覚で遊びながら学べる」(住環境計画研究所)工夫もある。

約9000人が受講して体験

 東京ガスなどは、環境省の委託事業として、17年4月から21年3月にかけて、プログラムを洗練するため、大規模な実証を行った。全国の小学校30校、中学21校、高校19校の計70校が参加し、約8900人を超える児童・生徒に毎週1回の授業を計6回、受講してもらった。

 児童・生徒の家庭で、受講前後で電力やガスの使用量などからCO₂排出量を算定したところ、受講した後には平均で5.1%削減していた。「子供たちが、家族を巻き込みながら省エネ行動を実践することが裏付けられた」(住環境計画研究所)という。

 さらに、省エネ行動を実践する児童・生徒の割合は、受講回数が増えるほど高まり、前後で21ポイント上昇したという。19年度に受講した小学生を追跡したアンケートでは、半年後、1年後でも、省エネ行動の実践が継続していることも確認できたという。

 実証では、14の大学で教員を目指す学生988人もプログラムを体験した。こうした結果を踏まえ、東京ガスなどは、プログラムを継続的に活用できるように、小中高校の教員向けとして教材を監修。「実証結果をフィードバック」(同研究所)させて、このたび完成させ、4月下旬から市販を始めた。

 同研究所は「脱炭素型のライフスタイルに転換していくため、環境教育に関する新教科を立ち上げるなどし、省エネの位置づけを明確化すべきだ」と話す。国などにも働きかけていくという。

 東京ガスは「より効果的な教育法を検討し、学校での省エネ教育に特化して、プログラムを開発し、効果検証に取り組んだ」としている。