2021.06.11 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<45>地域課題解決型ローカル5Gビジネスモデル③
前回、地域産業を変革するには「富山の薬売り」のような地域のサービス提供者のような、ユーザーエクスペリエンス(顧客体験)という付加価値を提供してくれる〝存在〟が重要で、ローカル5Gによる地域産業の変革においても同じであることを述べた。
今回は、さらに深掘りして、その〝存在〟というものがどういうものであり、誰が担っていくのかをローカル5Gのビジネスモデルを考えながら明らかにしたい。
まず「地域課題解決型ローカル5G」についてみていく。これはローカル5GをベースとするIoTや人工知能(AI)といったデジタル化によって、地域における個々のビジネス課題や社会課題などを解決したいというニーズに応えるもの。政府の地域活性化施策とも符合する。特に、地場産業のデジタル化への期待は大きく、筆者が参加している全国の高等専門学校関係者が集うコミュニティーにおいてもよく耳にする話題だ。
世界市場が目標
地場産業は、地域の伝統的な技や芸術によってブランド力のある製品を生み出し、国内のみならず世界の市場へ販売することを目標としている。「鯖江のメガネ」や「今治のタオル」などが成功例としては有名だ。
世界大百科事典(平凡社)によると、地場産業の定義として「同一業種の中小企業が特定地域に集積しつつ産地を形成し、そこに蓄積された技術、ノウ・ハウなどの経営資源や、そこで産出する原材料などを活用して…」とある。
そこで、ローカル5Gのビジネスモデルを考えてみよう。
中小企業自らがローカル5Gの免許を取得し、自己の土地や建物においてシステムを構築するのは難しい。一般的には「地域の通信事業者」がローカル5Gの免許主体となり、システムを構築・運用して「ローカル5Gサービス」を地域のユーザー企業へ提供する形態が現実的だろう。
ただ、ここで問題となるのが、5Gの電波を送受信できる通信ネットワークだけ提供されても、5Gに対応した端末とアプリケーションがなければ、無用の長物となりかねないということだ。
個々のノウハウ
たとえば、地場産業の技術伝承にローカル5Gを使うにしても、産業ごとに個々の技術やノウハウがあるため、職人技を4K/8K超高精細映像で撮影し、デジタルデータを蓄積していく際にもセンサーの種類や性能、AIによるデータ分析方法、端末の使い勝手など異なってくるだろう。
そのため一定の業種に特化した、いわゆるバーティカル産業(業種特化型)のプレーヤーである「地域の業種別サービス提供者」の存在が必要となるわけだ。ビジネスモデルとしては「地域の通信事業者(B)」→「地域の業種別サービス提供者(B)」→「地域の中小企業(B)」となる。
実際は、地域の通信事業者が地域のバーティカル産業や業界団体、地域の中小企業と連携しながら、ローカル5Gを利用した4K/8K超高精細映像サービスやVR/ARサービスなど新たな価値を創造していくことが求められる。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉